無印編
第二十一話 裏 (すずか、アリサ、なのは)
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い、と思っている。だが、そんなアリサの気持ちに水を差すようにアリサの一部分が問いかける。
―――本当に?
その自問自答が投げかけられたとき、アリサの心臓がドクンと大きく跳ねた。
分かっている。分かっている。あの時から微妙に齟齬が起き始めたような自分たちの関係を。すずかが翔太のことが好きなのだろう、と推測し始めた頃から微妙に変わっている自分たちの関係だ。表面上は、自分たちの関係は、まったく変わっていない、と自分に言い聞かせるアリサだったが、すずかが翔太に感じている恋ってなんだろう? とすずかを観察していたアリサは、すずかのアリサと翔太に対する態度の違いをはっきりと感じていた。
以前は、すずかの態度にアリサと翔太の間に明確の差はなかった。友人に対する態度。だが、すずかの態度には、明らかに優先順位は、翔太のほうが高くなっていることを感じていた。確かにアリサの読んだ本の中には、『恋は盲目』なんてことわざがあったものだが。
―――ショウもすずかに恋したらどうなるのかな?
不意に思いついた、思いついてしまった疑問。アリサの優秀といえる頭脳は、ちょっと待って、と心が制止の声をかける前に答えを探してしまった。その答えを少しだけ覗き込んでしまったアリサは、もう一度、ドクンと心臓が先ほどよりも大きく高鳴り、背中につめたい汗が流れるのを感じていた。
すずかと翔太がお互いに恋をして、お互いしか見えなくなれば―――その方程式から導き出される解は、極めて簡単なものだ。
―――アタシハマタヒトリニナル?
嫌だ、嫌だ、嫌だ嫌だいやだいやだいやだ、とアリサは、その仮定を否定する。不意に思い出されるのは、あの友人が一人もおらず、ずっと一人だった小学校に入学する前の自分。あの孤独な時間に戻るのだけは絶対に嫌だった。
―――大丈夫、大丈夫、大丈夫。ショウは、すずかに恋してない。
そう、すずかと一緒に翔太のことも観察していたのだが、翔太のすずかに対する態度はまったく変わっていない。すずかの変わった態度にやや戸惑っている感じはあるものの、アリサに対する態度も同じだし、すずかに対する態度も同じである。だから、大丈夫、大丈夫とアリサは自分に言い聞かせていた。
だが、一度、ネガティブの方向に転がってしまった思考は、またしても最悪を想像してしまう。
―――今は、大丈夫かもしれない。なら、未来は?
未来のことなど誰にも分からない。可能性ならば、いくらでも論じることができるだろうが、決まった未来を言い当てることは不可能だ。翔太がいつ、誰に恋するか、など分かるはずもない。もしかしたら、明日かもしれない、明後日かもしれない。あるいは、大人になってからかもしれない。相手は、すずかかもしれない。クラスメイトの女
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