無印編
第二十一話 中
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ない。問題は編入試験が受けられるほどにアリシアちゃんの学力があるかどうかだが。
「ねえ、アリシアちゃん、ここは、遊ぶだけじゃなくて、勉強もしなくちゃいけないんだよ」
「う〜ん、勉強?」
僕が言ったことを唇に人差し指を当てて考えるアリシアちゃん。だが、すぐに合点がいったのか、にぱっ、と笑うと口を開いた。
「大丈夫だよ。私、勉強するの好きだから」
「そう、じゃあ、頑張って勉強しようか」
アリシアちゃんがどこまで勉強ができるか分からない以上、この学校に入学しようとは簡単にいえない。ここは私立なのだから、試験を超える必要があるからだ。ただ、彼女が望むなら僕はアリシアちゃんがこの学校に通えるように手伝おうと思う。
「うん、頑張って、お兄ちゃんと一緒に通うよっ!」
笑顔で言ってくれるアリシアちゃんを微笑ましく思う僕だったが、後でアリシアちゃんの学力が下手をすれば、僕以上であることが判明するなど、このとき夢にも思うはずもなかった。
この後、先生から編入試験の案内を貰った母さんは、僕の休み時間も終わったこともあって、先生に頭を下げてアリシアちゃんとアルフさんと秋人と一緒に聖祥大付属小を後にし、僕はそれを手を振って見送るのだった。
◇ ◇ ◇
どうしてこうなったんだろう?
僕はまるで現実逃避をするように原因を考える。だが、その原因について思い当たることは何一つとしてなかった。しかし、何かしら原因があってしかるべきなのだ。僕が知る限り、彼女たちが何の原因もなくこんな風になるとは考えられないのだから。
「はい、ショウくん、今日も作ってきたんだ」
「ショウくん、お母さんの卵焼き好きだったよね? はい」
両側をなのはちゃんとすずかちゃんに挟まれ、両側からおかずを挟んだ端を差し出される。しかも、お互いに目を合わせるとそこはまるで火花が飛び散るような剣呑な雰囲気だ。まさしく両手に花という状態だが、これはそんな微笑ましいものではない気がする。さっきから、やたら冷や汗がとまらないし。
しかも、こんなとき場を収めてくれそうなアリサちゃんは、じと目で無言でこちらを見て観察するように伺っている。
どうしてこうなったのか? 原因を探るために僕は両方からありがとう、とそれぞれの料理を自分の弁当箱の中に入れながら、この昼食会の始まりを思い出していた。
きっかけは、お昼休みが始まった直後だった。昼休み直前の授業の教科書を机の中に仕舞っているところ、僕よりも早く片付けてしまったのだろう。パタパタとすずかちゃんが以前よりも少し大きめのお弁当箱をもって僕の席に近づいてきた。あの大きさから考えるにどうやら今日も少し多めに作ってきたらしい。
「ショウくん、お弁
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