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『彼』とあたしとあなたと

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日紅(ひべに)ちゃん、貧血だって?大丈夫?」



 桜が心配そうに起き上がった日紅の顔を覗き込んだ。



 大丈夫全然心配ないよと日紅は笑いながら答える。



 気がついたら日紅は保健室のベットにいた。(せい)が抱えてきたのだとナイスバディな保健室の先生は笑って言った。



 …なんなのよ、もう。犀のバカ。あほ。ぼけ。おたんこなす。



「で、ね、日紅ちゃん、あのねぇ?」



 頬を染めて日紅を見る桜の用件は大体わかる気がした。




















「山下さん」



 教室に戻ってきた日紅に、青山が真っ先に声をかけた。



「もう大丈夫なの?もう少し休んでいた方が、いいんじゃないのかな」



 心配げに日紅を見る青山は、まさに王子様。



「こいつはそんじょそこらのヤツと違ってひときわ丈夫だから平気だ」



 日紅と青山の間に割り込んでくるこいつは、さながら玉子様。



「…なんなのよ、タマゴ」



「は?卵?何で俺が卵?」



「青山くんと比較して」



「……酷くね?」



「全く」



 あんたの今朝の仕打ちに比べたら!日紅はフンと鼻を鳴らした。



「あ、で、山下さん、よかったらこれ」



 いけない青山くんもいるんだった。おしとやかに、おしとやかに。既に手遅れなことを心の中で呟きながら、はいと日紅が青山に手渡されたのは、ノート。



「?」



「山下さんがいなかった授業分のノート、とってあるから」



 よかったら使ってね、と言って光を振りまきながら青山は去っていった。



 おおう神様。思わずその背を拝んでいる日紅の頭を例の青山のノートでぺしりと犀が叩く。



「ぺ様も負けるわね」



「え、俺のこと?」



「あんたはぺはぺでも、かとちゃんぺ〜よ」



「酷!」



 そう言って笑う犀はいつもと全く一緒。



 日紅は内心ほっと息をついた。



「ねぇ犀。ちょっと、話あるんだけど」



「ん。ここじゃまずい?」



「ん〜…ちょっと」



「じゃ、弁当もってこい。屋上行こう」



 犀は日紅の頭をぽんと叩いた。
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