第二章「クルセイド編」
第二十一話「魔法外科医」
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きさの『何か』が表面に浮き出てくる。
エドワードは魔力による作用でリンカーコアをその体の表面に出したのである。無論こんな事意識がある状態ではできない。中に有るものを無理やり外に出すと言うのは子供でも危ないと思うものだ。普通にメスで体を刻むのよりも痛い。
だが、いやだからこそと言うべきか。
リンカーコアと言うのは人体で言う心臓のようなものである。つまり一度リンカーコアを体の表面に炙り出せれば体を一切傷つけず処置できるのだ。
勿論全身と言ってもその中で魔力を行使する為の神経が繋がっている所だけだがそもそも魔力の使用で体にダメージを受けた人間相手にその事を気にする必要は一切あるまい。
「……よし」
満足気に頷くと助手に向かって手を伸ばした。
「チューブ」
「ハイ」
魔力を使うための神経……そのまま『魔力回路』と言われるその細い管にチューブを通す。魔力越しに全身に薬を注入する事ができるのだ。その流れが正常に行き渡るのを確認してからエドワードはリンカーコアを眺めた。
(特に以上は無い。魔力波がちょっと高い位か?)
見ただけで、さらに情報を得てメスを動かす材料とする。
彼自身は否定するだろうがその様な事ができるのはこの次元世界中で彼だけかもしれない。
エドワード・クリスティ。その名前を知るものは数少ない。基本裏方に徹する人間なので必然である。ツァーライト一味に正式に入っている訳ではなく手配書にはその名前も無い。魔力も無く彼自身が破壊活動に参加する事すらできない。
だがエドワード・クリスティを知るものはその手術中の氷のような眼と冷静さ、天才的な手術の腕から彼をこう呼ぶ。
『魔法外科医』、と。
最後の仕上げとしてリンカーコアを縫合して後、誇るでもなく慢心するでもなくただ静かにこう思った。
(フェイトちゃんは何だか知らないが強烈な回復魔法で一気に回復されたみたいだった。
それでもあと数分もすりゃあ心臓は止まっただろうな。
リオンは『過剰負荷』で言語機能に以上をきたしていた。)
それは普通の医者なら匙を投げていた症状。一つの油断が死に直接繋がるギリギリの手術。エドワードはそれらを難なく成功させた。だがそれでもコレだけ思う。
(まあこんなもんだろ)
エドワードにとってはたったそれだけのことだった。
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