悪魔の兵器
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には何もなかった。
「ああ、食った食った」
それで終わりであった。彼等は何とか布団の上にまで行くとそこで倒れ込んだ。そしてそのまま潰れてしまった。
台は村雨が呼んだ仲居により片付けられた。村雨はそれを見届けると一人外に出た。そして風呂に向かった。
ここの風呂は外にあった。彼はそこに浸かり酒を抜いていた。
「ふう」
大きく息を吐く。それは湯気の中に消えた。
彼は夜空を見上げた。そこには星が瞬いていた。
「綺麗ですね」
横から声がした。そちらに目をやると役がいた。
「役さん」
「こうして空を見上げることなんて最近なかったですね」
「そうですね。・・・・・・いや」
彼はここで口ごもった。
「俺はあります」
「そうなんですか」
「はい。覚えていますよ、あの時を」
彼はここでバダンを脱出し東京に向かって伊藤と共に旅をしていた時のことを話した。その途中で彼はふと夜空を見上げた時があったのだ。
「あの時の空は綺麗でしたね。とても」
「そうだったのですか」
「はい、今でも覚えていますよ」
彼はにこやかに微笑んでそう言った。
「あの時の星は綺麗でしたね。まだ感情ってやつが戻っていなかったんですけれどよく覚えていますよ」
「そうなんですか」
「ええ。感情を取り戻すまでに本当に色々とありましたけれどその中でもいい思い出の一つですね」
彼はやや饒舌に語った。
「少なくともバダンでは見れないものでしたよ」
「それはわかります」
役はそれに同意した。
「バダンの支配する世界ではこんな綺麗な空はありませんよ」
「はい」
それは誰もがわかることであった。彼等にとって夜空の星は不要なのだ。
「彼等に必要なのは自分達だけです。首領を崇めない者は彼等にとっては敵でしかありません」
「そして弱い者も」
「そうです。彼等の世界、それは地獄です。この世に存在してはならない世界です」
「暗黒の世界ですね。俺もあの時まではそれがわからなかった」
彼はそこで顔を俯けた。
「心がなかったから。その心はバダンに消されていた」
「それがバダンなんですよ。不要なものは全て抹殺する」
「姉さんも」
ここで彼は姉しずかのことを思い出した。
「俺の目の前で殺された。まるでゴミの様に」
「彼等にとってはゴミだったのでしょう」
「はい」
激昂する気になれなかった。実際にバダンにとってはそうだったのだから。
「だから姉さんは殺され俺は心を奪われた」
「全ては彼等の野望の為にです」
「つくづくとんでもない連中ですね」
「はい。その様な者達はこの世に残しておいてはいけません」
役の声が強くなった。
「わかりますね」
「ええ」
もう詳しく言う必要もなかった。村雨もただ頷くだけであった。
「松坂に
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