嵐の前
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、そんなことは貴様等バダンも既に調べてある筈だが。貴様等の情報網を以ってすれば簡単にわかるだろう」
「確かにな」
三影はそれについては認めた。
「長野県警に在籍する警官だな。階級は警部補、年齢は二十五歳だ」
「その通りだ」
寸分の狂いもない。やはりバダンの情報網は恐るべきものであった。
「だがそれは表の話だけのことだ」
「表の」
「そうだ、全てにおいて表と裏が存在する。コインがそうであるようにな」
「何が言いたい」
村雨は彼の言葉の真意がわかりかねなくなっていた。
「一つ言っておくが我がバダンはあの男とは関係はない。それは安心しろ」
「それはわかっている」
三影の方から彼がバダンのダブルスパイであることを否定してきた。だがこれは既にわかっていることである。それは彼の行動でわかっている。
「しかしそれまでの経歴がわからない」
「経歴が」
「そうだ。何時何処にいたのか一切掴めないのだ」
「長野にいたのではないのか」
「いない。調べたが何も出てはこなかった。こんなことははじめてだ」
「バダンの情報網でもか」
「そうだ、悔しいことだがな」
彼はそう言いながら顔を顰めさせた。
「それにあの射撃の腕だ。あれは一体何だ」
「警察で鍛錬を積んだのだろう」
「それであれだけの種類の銃を使えるか。あれは最早神業の領域だ」
「才能があったのではないのか」
「貴様はそう考えるか」
「それ以外にどう考えろというのだ」
「フン」
三影はここで半ば舌打ち混じりに言った。
「どうやらあの時の言葉を覚えてはいないようだな」
「あの時の」
「そうだ、富士の樹海で俺が貴様を殺そうとした時のことだ」
「あの時か」
村雨はそう言われ目を顰めた。
「あの時俺は秘められていた赤い光の力を開放することができたが」
「その時のあの男の言葉だ。どうやら聞こえてはいなかったようだな」
「残念だがな。それどころではなかった」
「ならば仕方ない。教えてやろう」
彼はあらためてそう言った。
「あの時あの男は『予定通り』と言ったのだ」
「予定通り!?」
「そうだ、貴様がその力を開放するのをあらかじめ知っていたのだ。これは一体どういうことだ?」
「・・・・・・それは本当か」
「嘘を言ってどうするのだ。それに俺にも誇りがある。決して嘘はつかん」
それが彼の誇りであった。彼のプライドの高さは村雨もよく知っている。
「何故そう言える。奴は未来を知っているとでも言うのか」
「・・・・・・・・・」
村雨にはわからなかった。だがそれが嘘ではないのもわかっている。
「はっきり言わせてもらおう。奴は只の警官ではない。おそらく遙かに恐るべき存在だ」
「恐るべき存在」
「そうだ。あの全てを知っているかの様な話し方。おそ
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