嵐の前
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のようなものである。
この城は御三家筆頭尾張徳川家の城である。築城の名人加藤清正によって建てられたこの城は金の鯱で知られる名古屋の象徴であった。
雄大な天守閣である。この天守閣は二代目だ。第二次世界大戦の空襲により焼け落ち建て直された。だがその心は今もなお健在である。
「いい城ですね」
「はい」
役は城を見上げながら感嘆の言葉を漏らす村雨に答えた。
「これだけの城は我が国にもそうそうありませんね」
「そうですね。会津に大阪、姫路、広島、それに熊本がありますがこの城もその中に入りますね」
「ええ、本当に立派な城ですよ」
彼はその中でもこの城が特に気に入っていた。彼の好みに合っているのだ。
「この城にあるかもしれませんね」
「ええ、ここにもバダンがうろついていたそうですし」
バダンはあらゆるところに潜む。そしてそこから隙を窺うのである。
彼等はそれがよくわかっていた。だからこそ慎重に動いているのだ。
名古屋城に入る。そして入口で二手に別れた。
「それじゃあ」
「はい」
左右に散った。そして何かの捜索を開始した。
だがその何かは中々見つからなかった。城内を隈なく探した二人は天守閣の前に集まった。
「やはりここしかないようですね」
村雨はその天守閣を見上げながら役に対して言った。
「はい」
役はそれに頷いた。そして二人はその中に入って行った。
一段一段探し回りながら昇っていく。だがやはり見つかりはしない。そして遂に頂上に達した。役はまだ下の方にいる。
「ここにもないか」
彼が諦めようとしたその時であった。
「御苦労なことだな」
天守閣の外の廊下からサングラスの男が姿を現わした。
「三影」
村雨は彼の姿を認めてすぐに身構えた。
「よせ、今は貴様と戦うつもりはない」
だが彼は構えはとらなかった。村雨が構えをとらない相手を攻撃しないのを知ってのことであった。無論彼自身もそうである。
「では何故ここに来た」
村雨は構えを解いて彼に問うた。
「一つ聞きたいことがある」
「何だ」
「あの役という男だ」
「役さんがどうかしたのか」
「貴様はあの男と今一緒に行動しているな」
「ああ」
別に否定するつもりもなかった。
「では暫し見ている筈だ」
「何をだ」
「あの男の行動をだ」
「行動」
村雨はそれを聞いて怪訝な顔をした。
「役さんの行動に何かあるのか」
「ふむ」
だが三影はそれに対しては答えなかった。そのかわり考える言葉を発した。
「どうやら知らないようだな」
「何をだ」
「あの男のことをだ。一体あの男が何者かということをだ」
「おかしなことを聞くな」
村雨はそれを聞いて首を傾げずにはいられなかった。
「おかしなことか」
「そうだ
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