嵐の前
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が熟せば、ですか」
「うむ、急いては事を仕損じる。虎も牙や爪を養う時が必要なのだ」
「牙や爪を」
「そういうことだ。今はあの男は静かにしておけ。時が来れば自ら動く」
「わかりました」
その戦闘員は敬礼をして答えた。
「では今後ライダー達から目を離すな。今この基地の存在を知られてはまずいからな」
「わかりました」
戦闘員達がそれに応えた。
「そして準備を怠るな。我等も時が来れば動かなければならぬからな。その時はもう間近に迫っておるぞ」
「ハッ!」
戦闘員達は一斉に敬礼をした。そして彼等は次の動きに備えて気を養うのであった。
その頃村雨と役は名古屋にいた。中部日本でも随一の大都市である。
「名古屋はまた独特の街ですね」
村雨はうどん屋できし麺を食べながら役に語りかけていた。
「ええ、何か食べ物も独特ですしね」
役は海老を食べていた。名古屋では非常によく食べられるものである。
「この味噌と海老は欠かせないものですかね」
「まあそうでしょうね」
見れば役も海老に味噌を付けている。それも赤味噌である。
「織田信長も好きだったそうですよ」
「本当ですか」
「ええ」
これは事実である。信長は毎食焼き味噌を食べていた。当時味噌は非常に高価なものでありこの焼き味噌は金が落ちるとまで言われていた。だがこの戦国から安土桃山の時代にかけて生産力が大幅に上昇しこうした味噌も普通に食べられるようになっていくのである。弁当に味噌を入れるのはこの頃からであり、江戸時代には味噌汁も庶民の間で普通に飲まれるようになっていくのである。日本の食事は実はこの時代に下地があったのである。
「そう思うと何だが意味深ですね」
「実際に味噌は身体にいいですしね。うちの田舎でも結構食べますよ」
「そういえば役さんは長野県警におられたのですね」
「ええ、そうです」
役はここで顔を崩した。
「長野といえば蕎麦ですけれどね。あと林檎でしょうか」
「あそこの蕎麦はいいですね」
「そうでしょう、一度来られるといいですよ。御馳走しますから」
「それは楽しみだ」
二人はこんな会話を楽しみながら食事を採った。そして店を出ると市街に向かった。
「行きましょう」
「ええ」
二人は顔を引き締めさせた。そして中に入って行った。
二人は街中で何かを探し続けていた。時として散り、時として集まった。何かを必死に探していた。
「ありましたか?」
「いいえ」
二人は集まる度にそう言い合って首を横に振ったりしていた。だがそこに焦りはなかった。
彼等は探していた。明らかに何かを探していた。
この名古屋にそれはあるのだろうか。それはわからない。だが彼等はそれでも探していた。
名古屋城の前に来た。名古屋の者にとっては大阪人の大阪城
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