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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第九十二話 改革へ
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が答礼をする。
「心配をかけた事、謝ります」
「以後はこのような事はなさらないでください。閣下のお命は閣下御一人の物ではないのです。余りにも無謀過ぎます」
チュン参謀長がヴァレンシュタイン提督に注意をした。少し緊張している。参謀長だけではない、皆も緊張している。年が若いとはいえ相手は上官なのだ、機嫌を損ねるのではないかという懸念が有る。
「有難う、以後は気を付けます」
皆の緊張が解けた。何人かが顔を見合わせ頷いている。安心したのだろう、ヴァレンシュタイン提督は自らの非を認め素直にチュン参謀長の忠告を受け入れてくれた。峻厳と言われる提督だが他者の忠告を受け入れない方ではない、それが確認できたのが嬉しいに違いない。俺も同感だ、他者を責めるだけで自分の非を認められないなど暴君以外の何物でも無いだろう。
その後、ヴァレンシュタイン提督が一緒に艦橋に入って来た人間を紹介してくれた。見慣れない同盟の軍人はフェザーン駐在武官のヴィオラ大佐とその部下達だった。ミハマ中佐に部屋の割り当てを命じると提督はチュン参謀長に問いかけた。
「戦闘訓練の結果は如何ですか」
「はっ、当初予定した戦闘訓練メニューは半分が終了しています」
止むを得ない事だ、提督を迎えに行くために訓練は中断された。そして結果は必ずしも良いとは言えなかった。相手は正規艦隊だったのだ、元々の練度が違う。チュン参謀長の表情も決して良くない。
「そうですか、後で訓練結果の映像を見せてください」
「承知しました」
多分提督は顔を顰めるに違いない。しかし提督はハイネセンに戻らざるを得ない。訓練は戻ってからハイネセン近郊で行う事になるだろう。司令部ではそう見ている。
「私に何か連絡が入っていますか」
「第一特設艦隊には帰還命令が出ています。それとトリューニヒト国防委員長、シトレ元帥から連絡が欲しいと」
「なるほど、他には」
普通は此処で直ぐ連絡をするものなんだがな。こんな事は慣れているのかもしれない。
「ワイドボーン提督、ヤン提督より戻り次第連絡が欲しいと、会って話がしたいそうです」
「……他には」
少し顔を顰めたな。どうやら厄介だと思っているのかもしれない。多分後回しだな。
「情報部のバグダッシュ准将より連絡が有りました。戻られたら連絡が欲しいと」
提督が考えている。はて、何か引っかかるものが有るのか……。
「他には何か有りますか」
「いえ、有りません」
「そうですか、……私は部屋に戻ります。ワイドボーン提督、ヤン提督には明日、ハトホルで会いたいと参謀長から伝えてください」
「承知しました」
やはり後回しか。残念だったな、ヤン、ワイドボーン。それにしても提督が気にかけたのはバグダッシュ准将からの連絡だったな。情報部か、一体何が有ったのか
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