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Fate/Fantasy lord [Knight of wrought iron]
手を取り合う為に
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第三者からすれば滑稽な姿だろう。
それでも、ここで引き下がるつもりはない。

「………ルーミア」

「え?」

「私の名前。次に会う時にまで、その考えが崩れていなかったら、話してあげる」

それだけ告げ、振り返ることなく去っていった。
やはり、そう簡単にはいかないか。
それにしても、ルーミアと名乗った少女―――私が妖怪の話題を出した途端に、一気に雰囲気が変わった。
妖怪のことをまるで知らない私だが、妖怪だからという理由であの切り替えをしていたとは思えなかった。
まるで人格をすげ替えられたかのような切り替わり。いや、二重人格に近いものを感じた。
そんな不思議な少女の背を見送り、小さく溜息を吐く。

「やはりそう簡単には無理、か」

別の妖怪に聞くという手段も確かにある。
お誂え向きにも河童であるにとりが知り合いにいる。情報を得るならば友好的な相手との方がやりやすい。
だが、不思議とそんな選択を取る自分の姿が思い浮かぶことはなかった。
今の自分のまま、知識のままで妖怪を観察し、私自身がゼロから得た妖怪のイメージを固め、そして少女と再び相まみえる。
そうしなければいけないのだと、何故か勝手に納得している自分がいた。

幻想郷で生きていくしかない以上、妖怪との付き合い方も視野に入れていかなければならない。
それも事情を一切考慮に入れない一方的な敵対ではなく、手を取り合うことも考慮に入れた共存関係として。
過去に人間に害を為す存在は等しく葬ってきた身としては、今更過ぎる切り替えだ。
私が接してきた妖怪に、語るまでも無いレベルでの危険性を孕んだ者がいなかったこともあるが、我ながら何という偽善だろうか。
状況が変わったからとはいえ、果たしてそれが正しい選択なのかと自問せずにいられない。

「………考えるだけ無駄、か」

早計過ぎる行動は誰の得にもならない。
誤解を抱いたまま敵対するなんて悲しい展開も避けたい。
寧ろ私から妖怪に歩み寄ってみるべきか?
堪え忍ぶことに慣れているとはいえ、元より座して待つのは主義ではない。
明日からは本格的に妖怪に会う為に、積極的に行動してみることにしよう。

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