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Fate/Fantasy lord [Knight of wrought iron]
手を取り合う為に
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しまい、思わず顔をしかめる。
少女に限らず不快には感じるが、なんと言うべきか、戦争に駆り出された少年兵を見ているような気分にさせられ、余計に不快感が増すのだ。
―――しかし、これはいい機会かもしれない。
彼女が妖怪だと言うのなら、色々聞きたいこともある。

「恩義を感じているのならば、質問に答えてもらいたいのだが」

「いいよー別に」

「妖怪は何故人を襲うんだ?文献や史実で妖怪の在り方の殆どは、人間を脅かす存在として載せられている。ただ人を襲うだけの者もいれば、食用として扱っている場合もある。だが、人間を襲うという根底は決してブレることはない。何故なんだ?」

幻想郷は人間と妖怪が共に存在している。
人間側の視点で見るならば、妖怪と併存するということは人間側にまるで得が感じられない。
妖怪側からすれば人間は食糧としての意味がある為、釣り合いは全くと言っていい程取れていない。
そんな端から見れば妖怪贔屓にしか感じられない世界観で、果たして本当に妖怪が人間を補食しなければいけないのかが気になったのだ。
飢えを凌ぐだけなら、何も人間である必要性はない。
そこに何かヒントがあるのかもしれない。

「どうしてそんな事を聞くの?」

「命を狙われる理由も知らず、一方的に標的として見られて納得出来るわけがなかろう?。そちらにどのような言い分があるのかを知らずして、君達の存在を全面的に肯定するなんて土台無理な話だしな」

郷に入っては郷に従えという言葉がある。
数日前までは部外者でしかなかった私が、我が物顔で妖怪の存在を否定するのはあまりにも厚顔無恥が過ぎる。
もし二者の関係が成立していなかったならば、とっくの昔に幻想郷は滅んでいる筈。
とすれば、絶妙なバランスでこの世界は成り立っていると認識して間違いないだろう。
それに―――もし人間にとって不幸を強いられる世界だとして、早苗があんなに生き生きとしていられる訳がないしな。

「………じゃあいいよ。教える理由なんて、ない」

「何故そんなことを言う?」

「私が教えたとして、お兄さんは絶対に私達を肯定しない。だって、私達は人間を食べることは絶対にやめないし、やめられないから。それなのに教えて何の意味があるの?教えたら大人しく喰われてくれるというの?」

「それは―――」

言い淀む私の姿を尻目に、少女は立ち上がる。

「どう足掻いたところで、妖怪が人間を餌として見ることはやめないよ。だったらまだ、無知でいられた方が幸せじゃない?」

「―――それでも私は訊きたいんだ。納得は出来ないかも知れない。容認も出来ないかもしれない。だが、知らなければ歩み寄れないんだ。私は、君達を否定したくはないんだ」

去ろうとする少女の背中に向け、頭を下げる。

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