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Fate/Fantasy lord [Knight of wrought iron]
手を取り合う為に
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見覚えのある野生動物を狩り、焚き火で肉を焼く。
野草の類の採取も考えたが、肉と違い毒が入っていた場合の対処が困難だという点と、幻想郷に群生する野草が私の知識、いや常識で図れるような代物でない可能性を考慮したからだ。
それこそ、非現実的な食虫植物が居ても不思議ではない常識外の世界だ。
私の判断ミスであの少女にいらぬ負担を掛けてしまうのは愚かの極みだ。

「ん、んぅ………?」

肉の焼ける香ばしい匂いに反応したのか、少女が目を醒ます。
徐々に瞳の奥に光りが灯り、ついには物凄い速度で焚き火に接近し、肉と私を交互に見つめてくる。
言葉を発することなく、口元から大量のよだれを垂らしキラキラした目で訴えてくる。
………まぁ、元々彼女の為のものだから構わないのだが、何だろうかこの名状しがたい感情は。

「焼きたてだからな、冷まして食べなさい」

そう言って串に刺した肉を手渡すと、全く話を聞いていなかったらしくがっついて閉じた悲鳴を上げる。
だが、熱そうにしながらも食べる勢いは衰える様子はない。
それだけでどれだけ飢えていたのかが容易に想像できた。
水のひとつでも提供できればいいのだが、そこまで都合良くはいかない。

「ふぅ………ごちそうさまでした。ありがとうお兄さん」

あっという間に平らげ、ぽんぽんとお腹をさする。
獣一匹分の肉はあったのだが、まさか全部食べるとは恐れ入った。

「食べ終わったところで聞きたいのだが、君は何故あんな所から出てきたのだ?妖怪に襲われでもしたのか?」

「ん〜?妖怪に襲われてなんかいないよ。襲われる理由もないしね」

「理由がないとは解せんな。人間が妖怪に襲われないという謂われはないだろうに」

「―――あ、そうか。そういうことか」

成る程、と言った風にポンと手を叩く。

「私、妖怪だよ?」

「………なんだと?」

思わず少女をまじまじと見つめてしまう。
肩に掛かるか否かの長さの金髪に、ルビーのような瞳。黒が強調されたドレスに、側頭部にある赤いリボンのアクセントが利いている。
どこからどう見ても、幼い少女にしか見えない。
先の三人の妖精とも違い、人外だという特徴を一切持ち合わせていないせいで、からかわれているのではと疑わずにはいられない。
いや、外見だけで言えば吸血鬼だって牙ぐらいしか見分けがつかない場合も少なくはないし、一概に否定は出来ないのか?

「お兄さん、外の人でしょ?だったら仕方ないけど、妖怪を見かけで判断するのは駄目だよ。油断してるところをパックリいかれるかもしれないよ?」

「私を食べるつもりか?」

「そんなことしないよ。お兄さんは命の恩人だもんね」

屈託のない笑みでそう答える。
………こんな少女が人間を襲う姿を幻視して
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