萌芽時代・抱負編
[5/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
な声で続きを促した。
「マダラ達兄弟は、あなたの事を知っている様でした。お父上……先代を殺したのもその二人です」
「……どうしてオレの名前が出てくる? 何を聞いた?」
「――先代の首を刈り取った後、兄の方……マダラが言っておりました。『千手の木遁使いの父と言えど、この程度か』と」
それきり途絶えた声に何かを返す事も無く、私は乱暴に部屋の扉を押し開ける。
――そしてそのまま、外へと飛び出した。
「はぁ……、はぁ……!」
とにかく目的なんて物は無く、走るだけ走った。
気が付いたら集落の外れにいて、こんな時でも一族を守る義務を忘れられない自分を嗤う。
雨が降っていて良かった。これなら泣いたとしてもそれを隠せる。
「は、はは……!」
父上が死んだ。殺したのはうちはで、相手は幼い子供だったという。
うちは、マダラ。うちはイズナ。
おそらくあの少年達で、間違いないだろう。
「とんだ、因果じゃないか……! 私が助けた、あの兄弟が、父上達を殺したのか……!!」
空に向かって、大きく吠える。
いままでずっと人を助けて来た事を、後悔した事は無かった。
甘いと言われても、そうすることを変えなかったせいなのか……! その報いがこれか。
ぐるぐると周囲が回る。吐き気がこみ上げ、あまりの怒りに歯を食いしばる。
どうしよう、本当にどうしよう。
今からうちはの集落に、攻撃を仕掛けに行こうか。
なに、いくら写輪眼所有者と言えど自分が引けを取る事はあるまい。
襲撃して、父上達の仇を取ってさっさと集落に返って来れば良い。
そうすれば、そうすれば――――。
「う、うぅ……っ!」
胃液が逆流して、強い酸味と苦味が喉を焼いた。
その場に膝を付いて、四つん這いで喘ぐ。なんてみっともない姿なのだろう。
扉間を始めに、誰にもこんな姿を見せられない――見せたくない。
折角ミトが綺麗にしてくれた黒髪が雨に濡れて、額に鬱陶しく張り付く。
乱暴に口元を拭って、雨のせいで霞んでいる世界を睨みつけた。
仇を取って、それでどうする。そんな事をしてどうなるのだ。
吐いた胃液が地面に雨と共に沁み込んでいき、地に置いた左手がぬかるみに指の跡を作る。短く切り揃えた爪の間に泥が入り込んだ。
全身を焼き尽くす様な怒りが、雨に打たれているせいか静かに冷えていく。
ふらつく足で地面を踏みしめながら立ち上がって、曇天に隠された太陽を仰ぐ様に――視線を空へと持ち上げた。
「違う、そうじゃないんだ……!」
七歳の頃からずっと胸を苛んでいた靄の正体がようやく分かった。
父上が殺されたのも、うちはの少年が父上を殺したのも、この世界を構成している
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ