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木の葉芽吹きて大樹為す
萌芽時代・抱負編
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な声で続きを促した。

「マダラ達兄弟は、あなたの事を知っている様でした。お父上……先代を殺したのもその二人です」
「……どうしてオレの名前が出てくる? 何を聞いた?」
「――先代の首を刈り取った後、兄の方……マダラが言っておりました。『千手の木遁使いの父と言えど、この程度か』と」

 それきり途絶えた声に何かを返す事も無く、私は乱暴に部屋の扉を押し開ける。

 ――そしてそのまま、外へと飛び出した。

「はぁ……、はぁ……!」

 とにかく目的なんて物は無く、走るだけ走った。

 気が付いたら集落の外れにいて、こんな時でも一族を守る義務を忘れられない自分を嗤う。
 雨が降っていて良かった。これなら泣いたとしてもそれを隠せる。

「は、はは……!」

 父上が死んだ。殺したのはうちはで、相手は幼い子供だったという。
 うちは、マダラ。うちはイズナ。
 おそらくあの少年達で、間違いないだろう。
 
「とんだ、因果じゃないか……! 私が助けた、あの兄弟が、父上達を殺したのか……!!」

 空に向かって、大きく吠える。
 いままでずっと人を助けて来た事を、後悔した事は無かった。
 甘いと言われても、そうすることを変えなかったせいなのか……! その報いがこれか。
 ぐるぐると周囲が回る。吐き気がこみ上げ、あまりの怒りに歯を食いしばる。

 どうしよう、本当にどうしよう。
 今からうちはの集落に、攻撃を仕掛けに行こうか。
 なに、いくら写輪眼所有者と言えど自分が引けを取る事はあるまい。
 襲撃して、父上達の仇を取ってさっさと集落に返って来れば良い。
 そうすれば、そうすれば――――。

「う、うぅ……っ!」

 胃液が逆流して、強い酸味と苦味が喉を焼いた。
 その場に膝を付いて、四つん這いで喘ぐ。なんてみっともない姿なのだろう。
 扉間を始めに、誰にもこんな姿を見せられない――見せたくない。

 折角ミトが綺麗にしてくれた黒髪が雨に濡れて、額に鬱陶しく張り付く。
 乱暴に口元を拭って、雨のせいで霞んでいる世界を睨みつけた。

 仇を取って、それでどうする。そんな事をしてどうなるのだ。
 吐いた胃液が地面に雨と共に沁み込んでいき、地に置いた左手がぬかるみに指の跡を作る。短く切り揃えた爪の間に泥が入り込んだ。

 全身を焼き尽くす様な怒りが、雨に打たれているせいか静かに冷えていく。

 ふらつく足で地面を踏みしめながら立ち上がって、曇天に隠された太陽を仰ぐ様に――視線を空へと持ち上げた。

「違う、そうじゃないんだ……!」

 七歳の頃からずっと胸を苛んでいた靄の正体がようやく分かった。
 父上が殺されたのも、うちはの少年が父上を殺したのも、この世界を構成している
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