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木の葉芽吹きて大樹為す
萌芽時代・抱負編
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すね」
「そうだな」

 同じ事を思ったのか、ミトが小声で囁いてくる。
 ミトの言う通りだ。早く父上や母上が帰ってくると良い――そうすればきっと、この嫌な感じは解消されるだろう。

 ――……嫌な雨が降る、十五歳の日だった。

*****

 日中ずっと降り注いでいた雨脚がようやく和らいで、本降りから小雨へと変わり始めたのが、夕方に差掛かる頃。
 不意にそれまで静かだった集落がざわつき始め、私は先程まで手入れをしていた刀を置いて、ミトと共に騒ぎの中心へと向かった。

「――どうした! 何があった!?」
「兄上!」
「柱間様!!」

 一族の者達が出入りに使っている集落の門の一つの前に、一族の者達が集まっている。
 嫌な予感がして、人々の間を掻き分けて、押し進んだ。

「扉間、一体何が……!」

 思わず、目を剥く。
 目の前にいたのは、数日前から父上や母上と共に任地に向かっていた一族の中でも、手練で知られる忍者だった。
 その彼が、全身大火傷を負った状態で、同じ様に大怪我を負った仲間に支えられてぐったりしている。
 直ぐさま我を取り戻して、治癒を始める。本来ならば、然るべき場所に移してから行うべきだろうが、怪我の状態が状態なだけにそんな事を言っていられない。

「――ミト! お前は邸に戻って医療道具を持って来てくれ! 他の者達はこの二人のために部屋を用意しろ!!」

 殆ど怒鳴る様にそう叫べば、ミトは見開いていた瞳に力を取り戻して、邸の方へと走り出す。
 遅れて、一族の者達でも一際足が速い者達が怪我人のための部屋の準備をすべく走って行く。

「……申し訳、ありません。柱間様……」
「喋るな! 話が有ればもう一人に聞く! 今は大人しく治療されておけ!!」

 どれだけ高熱の炎に焼かれれば、この様な悲惨な怪我を負えるのだろう。
 ましてやここ数日の天気はずっと雨だった。並大抵の忍者の扱う火遁では、湿気の強いこの空気の中で火遁を発生させる事だって出来ないだろう。

「感知系の者達は、直ぐさま探索に入れ! もしかしたら二人の後を追って来ている者が居るかもしれない! 医療忍術に長けた者は応急処置をした後の二人を任せるからその準備を! あと、念のため非戦闘民を一カ所に集めておけ!!」
「はい!!」

 今まで一人だって、怪我人を死なせた事は無かった。私が治療すれば、死の淵にいる者だって現世へと戻って来たんだから、今回だって大丈夫だ。
 その自信に支えられ、周囲にいる一族の者達に治療片手に指示を飛ばす。

 ……よし、応急処置は済んだ。

「柱間様、部屋の準備ができました!」
「わかった! こっちはもう大丈夫だ。爛れていた肌の治療と、傷ついた臓器の再生を行った」
「はい!」

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