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木の葉芽吹きて大樹為す
萌芽時代・出逢い編<後編>
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 その中でも、世の人々に【天災】と例えられた獣が、目の前にいた。

『……そこにいるのは、誰だ』

 思わず言葉を忘れて魅入っていた私を我に返らせたのは、九尾の不機嫌そうな唸り声だった。
 ぎろり、と大きな鮮血の瞳が動いて、木陰に隠れていた私の方を見やると同時に、長い尾が軽く振るわれ、一振りで遮蔽物を消し去る。
 危なかった、避けなかったら間違いなく巻き添えを食らってたぞ。

『――――ふん。人間、それも忍びという奴らか』

 偉そうに鼻を鳴らす巨大狐。
 にしても、言葉の端々から人に対する侮蔑の感情が滲み出てるな。

『こそこそと物陰に隠れて何をしているのかと思えば。ワシを利用するための皮算用でもしておったのか』
「いや。あまりにも綺麗だったから、思わず見蕩れてた」

 正直に言ったのに、返って来たのは尾の一振りだった。

「おいこら! いくらなんでも照れ隠しには激しすぎるぞ! 断固抗議する!」
『黙れ! 巫山戯た事を抜かすな!!』

 尾に合わせて、鋭い爪の一閃まで追加された。心から思った事を告げただけなのに、この扱いは酷いよ!
 九尾の纏う赤黒いチャクラが沸騰する様に膨れ上がっていく。

「なんで怒るんだよ! 思った事を正直に述べただけなのに!!」
『嘘をつくのであればもう少しマシな嘘を付け、人間! 憎しみの塊であるワシを見て、人がそのような事を思う筈が無かろうが!!』

 吠える九尾の一撃を避け、一際大きな岩石の後ろに隠れて、頭だけを覗かせて九尾の方を見やる。
 荒ぶる尾の立てる音に紛れない様に、声を一際大きく張り上げた。

「なんでさ! 確かにお前のチャクラはおっかないが、オレがお前を美しいと思ったのは事実だぞ!」

 確か有ったよね。
 人間は抗い様の無い存在、又は現象を目撃したとき恐れの感情と共に、精神の高揚を感じるといかいう考えが。崇高概念、だったっけ?

「夕日に染まるその茜色の毛並みも、その大きくて真ん丸な赤い目も! 沈み行く夕日と共に大地と一体化していたさっきまでの静かな雰囲気も! 全部が綺麗だったから、思わず見蕩れてた!」

 今は暴れ回っているせいで、折角の雰囲気は霧散してしまったけど。
 こちらに振り下ろされた尾に、飛び移る。丁度、九尾の目の前に対峙する形になった。
 ――――真っ赤な、鮮血の様に鮮やかな、ミトの赤い髪とは趣の異なる瞳が眼前に有った。

「ほら、やっぱり綺麗な色をしている」

 ――――頬がだらしなく揺るんで、顔が笑みを形作るのが分かる。
 ああ、なんて綺麗なアカイロなんだろう。

 ミトの赤い髪に、黒髪少年達の三つの巴紋の浮かぶ真紅の瞳。
 それに九尾の狐の見事な朱金色の毛並みに、鮮やかすぎる瞳。
 ……どうも、
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