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木の葉芽吹きて大樹為す
萌芽時代・発覚編<前編>
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私はこの度「千手柱間」としての名前はいただいたものの、性別は歴とした女。

「なのになんで私が柱間なんだ……!」
「おれは姉者にお似合いの名前だと思いますが」

 隣で銀髪少年改め、弟が慰めの言葉をくれるが、お姉ちゃん悪いけどそれどころじゃないんだよ。
 思わず意味も無く走り回りたくなるのを必死に堪えながら、前世の記憶を必死に探る。

 “千手柱間”は男であった筈だ、それは間違いない。
 しかし、この度「柱間」の名を貰った自分は女。
 確かに他の女の子に比べても背の高い部類に入るとは思うし、言動だって女の子っぽくないし、お洒落やら綺麗な着物を着るよりも、外で修行する事を好んではいるし、女物を着るなんて面倒だから専ら男物で過ごして、時折「元気のいい若君ですね。将来は一族を支える立派な頭領となられる事でしょう」とか言われたりもしちゃったが――自分は歴とした『女』なのである。

「なのになんでだーー!!」
「あ、姉者!? 何故、柱に頭をぶつけ始めるのですか!?」

 弟が焦った声を上げているが、もうそれどころではない。

 何が悪かったんだ! 注意されても一向に女らしい事をしなかった事か!? それともインドア派だった前世とは違い、体を動かす事への楽しさに目覚めて一族の男子に交じって修行に明け暮れていたせいなのか!?
 ぐるぐると頭の中に言い訳じみた事ばかりが思い浮かぶ。

 けど、よりにもよって柱間はないだろう、柱間は!!
 父上の命名センスを疑いたくはないが、幾ら自分が前世の記憶持ちであったとしても、まさかの“柱間”だと誰が思うかよ! 
 ……と口に出すかわりに、胸中で叫ぶ。

「母上、母上〜! 姉者が先程からおかしな事をーー!」

 自分の言動に恐れを抱いたらしい弟が母上を呼びに廊下を走っていってしまったが、生憎とお姉ちゃんは君の事を気にかける事が出来ない程混乱しているのだ。すまん、弟よ。

 ……待てよ?

 幾ら何でも同姓同名だからと言って、自分が“千手柱間”に成り代わったと考えるのは時期尚早すぎるのではないだろうか?

 ――――では、どうしたら「自分≠“千手柱間”」になるのか?

 考えに考えて、それは天啓の様に私の頭の中で閃いた。
 木遁、木遁だ! あれ以上に私が“柱間”ではない事を証明するに相応しい手段は無い!

 前世知識が正しければ、木遁忍術を使えたのは千手の中でも彼一人だけ。
 つまり、木遁を使えなければ“千手柱間”ではない!

 六歳になる以前から、時折浮かんでくる前世の記憶に翻弄されながら手をつけていた木遁忍術。
 前世を自覚してからは、いずれ生まれてくる千手柱間の役に立つ様にと、密かに研究を進めていた木遁忍術だがその開発を早めよう。

「…………早いと
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