第二十話 少年期B
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せるという複数の同時思考・進行『マルチタスク』を高速かつ的確に行っていたということだ。水場だったから魔力を変換させたんだろうけど、正直舌を巻いた。
「好きこそ物の上手なれか。研究者になったのも調べるのが好きだった時の影響?」
「それもあるわね。でも昔は、魔導師として魔法を使っていく道にしようか悩んだりもしたのよ」
「そうなの?」
アリシアと同様、俺も母さんの昔話に興味が出る。もしかしたら母さんだって、管理局員とか民間の魔導師として働いていた可能性もあるのか。でも確かに、普通魔力量も豊富で、魔法の高等技術も使えたらそっちの道を考えてもおかしくはないよな。
「ただお母さんが子どものころは、まだ管理局もできたばっかりでね。あの時代はある意味時代の黎明期、……新しい時代が始まってまだそんなに経っていないころだったの」
「そういえば、管理局ってできてまだ40年も経っていないんだよな」
なんか随分昔から管理局があったような気もしていたけど、母さんが産まれる数年前にはまだ存在すらしていなかった。しかもそれまでは、かなりやばい時代だったって聞く。そう考えると、たった30年少しでここまで世界を安定させたってことだよな。
「でもそれって、魔導師としての力がかなり求められていたんじゃないの? まだ今みたいに安定してなかったんでしょ」
「その通りよ。私も管理局の嘱託魔導師として、一時期働いていたこともあったわ」
へぇー、それは初耳だ。嘱託とはいえ、管理局の方で働いていたことがあったんだ。アリシアも母さんの話に驚きながら、話の続きを促している。
「当時は魔導師として順調に仕事をこなしていたわ。だけどね、そんな時にふと思ったの。平和のために頑張ってきたって今でも言えるけど、もっと他に方法はなかったのかしらって」
「ほかに?」
「…次元犯罪者になった人の中には、貧しさや不安定な世界の情勢……変化に巻き込まれてしまった人もいたわ。当時の私にできたのは、ただ事態を収めることしかできなかったから」
母さんはどこか懐かしむように、どこかさびしそうに言葉を紡ぐ。俺は想像することしかできないけれど、何となくわかるような気はした。
俺は、原作の母さんが次元犯罪者になってしまったことを思い出す。やり方が法に触れてしまったからだけど、それでも母さんは好きで犯罪者になったわけではなかった。
ただアリシアにもう一度会いたい。次元犯罪者にならなければ、どうしようもないぐらいに追い詰められていたからだ。けれど原作の母さんの行動は、世界から見れば決して正当化できるものではなかった。だから、止められたんだ。
難しいだろうに、真剣に母さんの話に耳を傾けるアリシア。俺はそんな妹を見ながら、どうして母さんが研究者に、開発者になっ
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