無印編
第二十話 裏 後 (クロノ、レイジングハート、リンディ、なのは)
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に翔太は、言葉を紡ぐ。
「ね、怒らないから」
翔太に嫌われたくないなのはは、その言葉に縋りたくなった。口にしないで嫌われるよりも、正直に口にしてしまったほうがいいのかもしれない、と思ってしまった。翔太の浮かべる笑みは確かにいつもよりも優しい笑みだ。その笑みを信じたかった。だから、なのはは最後に確認するように小さな声で翔太に問う。
「……本当なの? 嫌ったりしない?」
「本当だよ。約束する」
間髪入れない翔太の答えになのはは安心した。少なくとも翔太が嘘をつくなんて考えられない。だからこそ、なのはは正直に答えようと思った。だが、それでも万が一を考えると覚悟が必要だった。大きく息を吸って、覚悟を決める。翔太が口にした約束を信じて。
「ジュエルシードを使ったの」
言った。言ってしまった。真実を口にした後、なのはは翔太の様子をおずおずと確かめた。約束が確かなら、翔太は怒っていないはずだから。だが、真実を口にした後、翔太の表情を確認したなのはは、ひっ、と息を呑んだ。
なのはが見たのは翔太が怒っている感情だった。いや、正確には翔太はそれを隠そうとしていたが、いい子であろうと人の顔色を伺って生きてきたなのはだ。いくら隠そうとも、しかも、たった一人の友達である翔太の感情だ。なのはが読み取れないわけがなかった。
――――どうしよう? どうしよう? どうしよう、どうしよう。
やはり正直に口にするんじゃなかった、となのはは後悔した。きっと、なのはが口にした真実は、翔太の許容範囲を超えていたのだ。その考えに至ったなのはは、翔太に嫌われてしまうんじゃないか、と恐怖した。先ほどの翔太との約束に縋りたかった。怒ってないよね? と口にしたかったが、それがさらに翔太の怒りを逆なでするのではないか、と考えると口には出せなかった。
どうすれば、翔太に嫌われずにすむか? と考えていたところで、翔太が気持ちを落ち着けるように大きく深呼吸して、少し落ち着いたような表情になって、翔太は再び問う。
「どうして、そんなことをしたの?」
―――どうしよう? 正直に答えたほうがいいのかな?
もう、なのはにはどうしていいのか分からなかった。嘘をついても翔太に嫌われそうだったし、正直に言っても翔太に嫌われそうだった。どうするべきか? と考えるなのはだったが、すぐに答えなければならないような気がして、すぐに辻褄のあう答えも見つけられなくて、なのは正直に答えることにした。先ほどの翔太の正直に答えれば怒らない、嫌わないという約束に縋って。
「だって……魔法で負けたら、ショウくんとは一緒にいられないから」
そう、それが理由だ。魔法以外に翔太に必要とされる理由がないなのはは負けられない。負けてはいけない。
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