無印編
第十九話 裏 (アリサ、アルフ、クロノ、なのは)
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アリサ・バニングスは未だに悩んでいた。先日、母親から言われた言葉が脳裏から離れないからだ。つまり、特別な好きを示す恋とは何ぞや? ということである。
特別な好きといわれてもアリサからしてみれば、親友である月村すずかも蔵元翔太も両者とも好きだし、母親も父親も好きだ。同じ『好き』だという言葉だが、果たしてそこに違いがあるのだろうか。少なくともアリサが実感する上ではあまり違いが分からなかった。どれも同じように思った。
だが、同じであれば、すずかが翔太に感じている好きを『恋』などと称さなくてもいいだろう。
すずかと翔太は分かっている。しかし、自分だけが分からない。それは不安だった。自分だけがおいていかれているようで。だから、アリサは土日の二日間を『恋』という単語を調べるために使った。
最初に調べたのは国語辞典。そこに載っていた意味は、【恋:特定の異性に強くひかれること。また、切ないまでに深く思いを寄せること】とある。これだけで、なるほどと納得できるようであれば、最初から悩みはしない。
―――特定の異性に強く惹かれる?
その意味を考えてみる。状況だけで考えるなら、なるほど、すずかは翔太【特定の異性】に強く惹かれているのだろう。だが、分かったことはそれだけだ。母親が予想した内容を裏付けるようなことになっただけで、アリサが恋というものを理解できるまでには至らなかった。
次の対象は、電子的な情報であるインターネットで調べてみるか、と検索サイトで単純に『恋』という検索ワードだけで調べてみたが、ヒット件数が多すぎて探すのをやめた。検索サイトの場合、上位に示されているものが合致する場合が多いというが、恋占いなどが上位に示されており、アリサの求めている情報ではなかった。
さて、辞典もダメ、インターネットもダメ、だからといってすずかに聞くのは負けた気がして嫌。いきなり八方塞な様な気がした。だが、アリサにはまだ頼るべき存在が家の中にいるのだ。アリサは決意するとその人物の元へと駆け出した。
「ママっ!」
「なに? アリサ」
今日は休日。いくらアリサの母親が経営者といえども休日には家にいるものである。アリサにとって頼るべき存在は母親しかいなかった。
自分の部屋にいたアリサの母親は、突然入ってきた娘に驚いたようだが、基本的に笑顔でアリサを迎え入れていた。迎え入れたアリサの母親は、アリサの話を静かに聞いていた。アリサの話を全部聞いた母親は、すべて合点がいったように大きく頷くとアリサにこう提案する。
「それじゃ、本屋に行こうか」
なぜ、本屋なのだろうか? とアリサは思ったが、アリサ自身になにか案があるわけでもなかったので、母親に従い、二人で本屋に向かう。そこで母親が買ったのは数冊の本。
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