無印編
第十九話
[1/15]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
アリシアちゃんを保護してから二日が経過した。
一日は休日だったが、今日は休日明け初日の学校だ。アリシアちゃんはなのはちゃんのお父さんの伝手で医者を紹介してもらっているので、今日は母さんと一緒に病院にいく予定だ。もっとも、表面上の虐待のような跡だけは、救急病院で見てもらっているので薬と包帯で治療してもらっているが。なにせ、あの傷跡は見ているこっちが痛くなる。擦過傷で鞭のようなもので叩かれた結果らしい。
今日の病院は健康診断やアルフさんが言うフェイトちゃんの存在を確かめるためのものに近い。
さて、アリシアちゃんのことは母さんに任せるとして、現状、僕は目の前の敵と戦わなければならない。
「これ、私が作ったんだ」
「……おいしそうにできてるね」
さも当然のようにはい、と綺麗に焼けた卵焼きを箸に挟んで、僕に差し出してくるすずかちゃん。休日を挟んだから少しは収まっているだろう、と考えたのだが、どうやら僕の考えが甘かったようだ。さりげなく隣に座るアリサちゃんに助けを求めようと目を合わせてみるが、アリサちゃんはこちらを注意深く観察するように見ているだけで僕を助けるつもりはまったくなさそうだった。
いや、その前にこの状況を助けるという意味さえ分からないのかもしれない。女の子同士の昼食ならこのくらいは当たり前らしいから。だから、アリサちゃんにしても普通のことで、助けるという選択肢はないのだろう。
さて、断わろうにも、笑顔で箸を向けてくるすずかちゃんの笑みには、断わるという選択肢を断固として許さないというような強い意志さえ見える。気迫とでも言おうか。もしも、ここで断わったとしても、おそらく「いいえ」を選択しても無限にループする選択肢のような状況になりかねない。
覚悟するしかないのか……。
ちょっと、いや、かなり恥ずかしかったが、断わるという選択肢を選べなかった僕は、大人しく箸に挟まれた卵焼きを口に運ぶ。口に入ってきた卵焼きは、やや甘かったが許容範囲内。卵焼きの砂糖や塩加減というのは、家庭によって千差万別だから、もしかしたら、これが月村家の卵焼きの味なのかもしれない。それにしても、これだけ甘いのに焦げた様子が見られないのがすごいと思った。
「どうかな?」
自分で作った料理の味がよほど気になるのか、ワクワクしているようなドキドキしているようなそんな半々の表情を見せながらすずかちゃんは僕に問う。
さて、どう答えたものか。少なくとも拙いとは到底答えられない。だが、ここで手放しで褒めると明日も作ってきそうで怖い。一番恐れているのは、これが常態化することだ。毎日この状態。耐えられそうになかった。結局、目の前で僕の答えを目をきらきらさせて待つすずかちゃんをこれ以上待たせるのも限界だっ
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ