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リリカルってなんですか?
無印編
第十九話
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どうか分からないが、目的地に着いたのは結界を張った五分後だった。

 海浜公園についた僕たちが見たのはゲームの中に出てくるモンスターの人面樹のような生物(?)が暴れている姿だった。それは、周りのベンチやゴミ箱や柵を自らに生えた枝などで次々に壊していく。ユーノくんの結界が間に合っていることを願うだけだ。

「たぶん、木にジュエルシードが取り付いたんだ」

「でも、どうして怒ってるのかな?」

「なんでだろう?」

 ジュエルシードが今、暴れている人面樹に取り付いたのは間違いないだろう。だが、ジュエルシードは願いをかなえる宝石。ならば、木に意思があるかどうかは分からないが、その願いに答えるはずだ。まさか、自然破壊をしている人間に怒りを示したいとでも願ったのだろうか。

「俺たちが、あの枝をひきつける。その間に封印を頼んだぞ、なのは。忍、ノエル、いくぞ」

「わかったわ」

「了解」

 恭也さんが端的に作戦を告げ、小太刀に手をかけた状態で人面樹にせめていく。忍さんもノエルさんも恭也さんに続いた。

 どうするつもりなのだろうか? と思ってみていると、人面樹が恭也さんたちに気づいたのか、幹に浮かび上がった人面部分が恭也さんたちを見据える。やがて、恭也さんたちを認識した人面樹は、Woooooooonという叫び声を上げて鞭のようにしなる枝の標的を恭也さんたちに変更した。

 ―――危ないっ!!

 そう思ったのだが、その認識はどうやら恭也さんたちを甘く見ていた証拠だったらしい。
 鞭のようにしなる複数の木の枝を恭也さんも忍さんもノエルさんも危なげなく避ける。避ける。避ける。それは彼らが曲芸師といっても何の偽りもなさそうなほどに見事なものだった。

「見惚れてる場合じゃなかった。なのはちゃんっ!」

「うんっ!」

 僕の声だけで状況を理解してくれたのだろう。なのはちゃんは、レイジングハートを起動させる。もっとも、なのはちゃんのバリアジャケットは殆ど制服と変わらないから起動させる前と起動させた後では彼女の手に持つものが宝石か杖かの違いしかないのだが。

 杖を構えたなのはちゃんは、きっ、と人面樹を睨みつけるとたたたっ、と前に駆け出す。

 恭也さんたちは敵の陽動。なのはちゃんは封印の要。そして、僕はなにもできない。魔法はなのはちゃんほど使えないし、恭也さんたちのように動けるわけでもない。だから、せめてできることをしようと思った。

「なのはちゃんっ! 頑張って!!」

 応援ぐらいしかできない自分が少し情けないと思った。こんなことしかできないのか、と思った。だけど、なのはちゃんは、僕のそんなちょっと沈んだ感情を払拭するように振り返って笑顔で応えてくれた。

「うんっ! 私、頑張るねっ!」

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