第五話
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った……」
エルシャンの前世である田沢真治は理系の癖に数字の羅列を記憶するのが苦手という問題を抱えていて、とりあえず必要な数字や興味のある数字は語呂で憶える。語呂が無ければ自分で作るという習慣があった。
そして彼の語呂作りの特徴としては人物名を多用する。ただ歴史上の偉人などはそう簡単に当てはまるものが無いので、数字に当てはまる適当な名前を作る。当然それでは思い出す事が出来ないのでしっかりとキャラクターを立てて、比較的得意なエピソード記憶を駆使して思い出すのであった。
「三井……三井で下の名前は3文字。三井、みつい、ミツイ……ナナオ!……いや違う漢字だ。ナナオじゃ70になるから、奈菜緒で770なんだ……」
「ニイチャ! ニイチャ!」
どこか既視感を覚えずには居られないタイミングで、ソファの下から弟ウークがエルシャンに必死に呼びかける。
取り合えず考え事を頭の中の片隅に追いやり、上から覗き込むと相変わらずのモコモコ毛玉のような愛らしい姿に、自然とエルシャンの頬が緩む。
「どうしたの?」
「あのねべーとムーが泣いてんの!」
ウークが自分も泣きそうなりながら呼ぶベーとムーとは、まだ1歳になったばかりの双子の妹達でベオシカとムアリのことだった。
今日は両親が家を留守にしており、家に居るのは子供たちだけ、とは言え家の中には育児用ロボットもあり子供たちだけでも大きな問題は無かったのだが、流石に優れた育児用ロボットといえども、実の親でもそうであるように泣く子を簡単に泣き止ませる事は難しい。
急いでトテトテと前を走るウークの後に続いて、居間をでて双子が居る両親の寝室へと向かう。
寝室のドアをあけると、2人分の泣き声が大音量となってエルシャンの鼓膜を突き、ウークとともに耳を伏せ尻尾は逆巻きになって股の間に入り込む。
「ニーチャ」
何とかしてくれと涙目で見上げるウークの瞳にエルシャンは逆らえなかったし逆らう気すらなかった。
寝室に踏み込むと、双子を抱き上げてあやしている育児用ロボットに「ベオシカを渡して」と指示を出し両手を差し出すとロボットは左腕に抱いていた双子の片割れをそっとエルシャンの腕の中に渡す。
この育児ロボットの腕は感触・温度ともに人肌と同じように調整されており、母親に抱かれるよりも赤子には快適なように作られて入るのだが、エルシャンが見るところまだ完璧とはいえない。
エルシャンは自分の腕の中で、まだサイレンの様な鳴き声を上げるベオシカに、口を大きく動かしながら「あーう、あーう」と声を掛ける。その声に興味を惹かれたベオシカは一瞬泣くのを忘れて視線を声の元へと向ける。
ぐずりながらこちらに向ける様子に笑顔を浮かべながら再び大きく口を動かしながら声を掛け続けると、ベオシカは機嫌が良くなったわけではないが不思議そ
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