第五話
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心……いや、『私が操縦する限り誰にも落とされはしない!』などと胸の内で吼えているので甚だ疑問である。
しかし、この言葉でエルシャンは目の前にニンジンをぶら下げられた馬の心境。更に奮起し彼のやる気は120%どころか200%を超えた。
「ばらけたら面倒だ!」
戦闘開始と同時に、エルシャンは標的機の集団へと機首を向けると最大加速で突っ込ませる。
対質量比出力で劣る標的機が加速しきれずにもたつく中、早くもレーザー砲の射程に迫ると自機の軸線上に先ずは1機の標的機を捉える。
「ひとつ!」
トリガーを引くと、機首より迸る閃光がターゲットスコープの中の丸い標的機の中心を撃ち抜く。
次の瞬間、眩い光とともに爆散する標的機を尻目にエルシャンは軽く左の操縦桿を左斜め前に振るだけで、2機目の標的機を捉えた。
「ふたーつ!」
最初の爆発の光が消えぬ間に新たな光球が漆黒の空間に生まれる。
「馬鹿なっ!」
戦闘開始から僅か50シュルン(18秒間)足らずで標的機が落とされるのを目の当たりにし、愕然として固まっていたポアーチは2機目の撃墜の爆発に意識を戦場へと呼び戻すことに成功する。
次の瞬間、反射的に自ら操縦する標的機を鋭角に沈み込ませることで、直後真上を通り抜けた光の矢から逃れことが出来たが、他の標的機とは違う動きにエルシャンが気付く。
『あれ? 今の動き、それを操縦してるのってもしかしてお父さん?』
通信機から聞こえる息子の声に「まずい、ばれてる!」と焦ったポアーチは通信を切断すると、音声入力でAIに指示を出す。
「各標的機は、私が操縦する機体を援護しろ」
冷静さを欠いたこの命令によって戦いの天秤は大きく傾く。
ポアーチ機を守るように密集隊形を取らされた標的機はエルシャンにとって格好の獲物であり、文字通り『的』として次々に撃ち落されていくのを打つ手も無く見守る事しか出来なかった。
「ヤバイ」
ポアーチの周りには、既に他の標的機は残っていない。
全部で10機居た標的機は自機を残して全て撃墜されてしまっている上に、残り時間はまだ半分以上残している。
これで自機を落とされたら、アドバンテージが標的機側にある以上言い訳しようが無い敗北が決定してしまう。
『嫌だ! まだ6歳の息子に負けたくない。せめて後10年は強い父の背中を息子に見せ付けて居たいんだ!』そんなことを考えていても息子の攻撃の手は緩まない。
この訓練の条件的に、逃げ回る標的機に機動力で勝る訓練機が背後に回りこんで追い掛け回し軸線上に捉えて撃墜する格闘戦──ドッグファイト……犬だけに──ならば、逃げるポアーチに分があったはずだが、エルシャンは訓練機の優速を活かしての一撃離脱に徹した。
「何故だ? 何故固定のレーザー砲だけで一撃離脱戦法が、こうも成
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