第五話
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きは幸いポアーチの耳には届かない。もしポアーチがそれを聞いていたら修業の旅という名目で家出することだろう。
一方エルシャンは、実際に機体を使って、しかもゲームのように命の危険を心配することなく思うままに飛ぶ事が出来る。そう期待していたのに適正無しと判断されパイロットに成れないのではと落ち込む。
「今度は標的を出してみるか」
ポアーチの言葉に、まだ適正テストは終わっていないと気付くと、現金にもエルシャンの身体中にやる気がみなぎる。
「はい!」
そう力強く応えると『今自分の出せる力を全て、いや120%の力を出してやる!』と余計な決意を胸に刻む。
直径5mほどの標的機を撃墜するのが目的だが、直径5mほどの球形の標的機は対質量比出力ではエルシャンの乗る訓練用の機体の半分に設定されており運動性能で大きく劣るものの、訓練用機の兵装が機首に取り付けられたレーザー砲のみで、さらに本来戦闘用の機体に取り付けられているロックオンすれば前後左右15度稼動域内で自動照準するレーザー砲と異なり、固定式で動く標的を機体の軸線上に載せない限りは命中させることが出来ない為、同じ程度の技量のパイロットがそれぞれ標的機と訓練機を操縦した場合は、標的機が制限時間一杯逃げ切るのは難しいことではない。
ポアーチは10機の標的機の内9機の自動操縦の設定難易度を最大に引き上げ、更に残りの1機の操縦権を自分へと設定した。彼は大人気なく本気で息子に対して勝ちに行くつもりだった。
普通、練習用の標的機は自動操縦の難易度は最低に設定され、その機動はふわりと表現される。動き自体の緩さと動く目的の曖昧さが「ふわり」と呼ぶのが相応しい。それでも固定レーザー砲ではターゲットスコープにその姿を捉えることは一般パイロットの技量では難しいとされる。
これが熟練の腕利きと呼ばれるパイロットが訓練する際の難易度では、標的機は訓練機から逃げるように動き続けるため、一流と呼ばれるパイロット達でも梃子摺る。しかし、それでも難易度は中程度にすぎない。
そしてフルント人の様にパイロット適正が抜きん出た種族の中でも一流と呼ばれるエースパイロット達が訓練に臨む際に設定されるのが最高難易度で、標的機は持てる推力を全てを使い、なおかつ生体以上の反応速度を持つ高度AIがその能力を余すことなく発揮して操縦する。
だがパイロットもこのレベルになると常識を飛び越えた存在であり、例え反応速度で劣っても総合的技量とセンスでAIを上回り標的を撃墜してみせる。とはいえ1機か2機が限界だった。
「制限時間は25フルン(約15分間)。もし時間内に全機撃墜できたら……そうだな、次は実戦に連れて行ってあげるよ」
出来るわけが無い目標をあえて口にするポアーチ。これも息子が己の才に慢心して道を誤る事がないようにとの親
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