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故郷は青き星
第五話
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「以上が基本的な操縦法だけど分かったかい?」
 スクリーン越しに映るエルシャンは、自分の説明中に2度ほどおや? という表情を浮かべたが、すぐに自己解決したように頷くと、後はふんふんと頷くばかりで聞き直すことも疑問を口にすることなく、その様子に本当に理解してるのか、それ以前に軽く聞き流されてしまっているのでは? と不安なポアーチだったが、エルシャンはきちんと説明を聞いて理解していた。
 優れたゲームの操作法は説明書を熟読しなくても直感的に使いこなせるもので、擬体──訓練モードなので、この擬体も仮想存在──と同調を開始した直後に航宙戦闘機SF/A-302のコックピットの中に居る自分に気付き、周囲をざっと見回すと操縦系統周りは実にシンプルな構成で、一通り見ただけで何パターンかの操縦法のイメージがエルシャンの頭の中に浮かぶ。
 ポアーチから説明された操縦法はそのイメージの範囲内だったので、このコンソール周りの設計者に感心すると同時に、自分のイメージを作ってくれた地球製……のゲームに深く感謝した。
「大体は分かったと思う」
 そう言ってしっかりと頷く息子の様子に不安を感じないでもなかった。これが実戦なら、いやたとえ訓練だったとしても、曖昧に出来る問題ではないが、これから行うのは訓練ですらない、適正の確認と言う名目で彼に戦闘機の操縦に興味を持ってもらうのが目的なので深く追求することは無かった。
「そうか、じゃあ動かしながら慣れて行くか」
 口頭で細かく説明するよりも実際に動かしてみて楽しみながらやってみれば、子供ならすぐ身体で覚えるものだと経験上ポアーチも分かっていた。
「はい!」
 待ってましたとばかりに良い返事を返す。

「…………」
 数分後、無重力のフィールド内の各所に浮かぶ直径30mほどのリングを自在に潜り飛び回るエルシャンの機体に、ポアーチは言葉を無くしていた。
 最初の内こそ、ぎこちない動きを見せ、リングに接触する息子に「上手いぞ」などとリップサービスをしていたが、ものの数分でコツを掴むと機体を意のままに操り始めると何と声を掛けたら良いのか分からなくなってしまった。
 2本の操縦桿を操り、まるで熟練のパイロットの如く正確で無駄が無く、かつ流れるように美しい機動を見せ、しかも現在もなお目に見えて上達を続ける。
 操縦法を学習しているというよりも、忘れていたものを思い出しているかのような上達速度を見せる息子の才能に、ポアーチは父親として『さすが俺の息子!』と嬉しくも誇らしく感じると同時に、あまり認めたくは無いが1人のパイロットして胸の内に湧き上がる嫉妬を自覚せざるを得ない。

 ポアーチは8年前に事故によって父母と長男であった兄を一度に亡くし、新たなトリマ家の当主としてシルバ6を旗艦とする基幹艦隊の司令に就くまではパイロットと
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