第6話 死に顔動画【ニカイア】(2)
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「すずか、あの化け物のことを知ってるの?」
「っ!! ひっ、わ、私じゃない。私は、化け物じゃ、なぃ……」
先程の男の発言を引きずってか、すずかはふいに向けられた視線から目をそらし、ぶつぶつと自己弁護をする。
親友の変わり果てた姿に目まいを覚えつつも、アリサはそれでもすずかと生き延びるために考えをめぐらす。
状況は最悪だ。自分たちを誘拐した男たちだけでも脱出は不可能に近かったのに、それに加えて化け物が追加されている。
不幸中の幸いは、男たちも化け物も、自分たちの事をほっといて戦っている、ということだろうか。
だが、それがどうしたというのか。化け物は男たちを一蹴する力を見せつけているし、彼らを蹴散らした後こちらに向かってくるかもしれない。
ではそれまでに脱出できるか、という事になるが、自分たちがいるのは建物の一番奥まった場所、出口から反対の壁際。両手を縛られた状態で??たとえ縛られてなくても??目の前の嬲り殺しという名の惨劇の中をやり過ごす事は出来ないだろう。
「これって、完璧に手詰まりじゃない…」
アリサは愕然とする。
どうあがいても絶望。進めば目の前の嵐に呑み込まれ、座していてもやがて悪魔がこちらにやってくる。
「けど」と一息気合いを入れる。結果は無駄死にかもしれない。だが、自分は座してそれを受け入れるつもりはない。
「最後まであがいて、あがいて、足掻き切ってやるんだから!!」
アリサは自分を奮い立たせ立ち上がり、俯いているすずかと共に脱出をする決意を固める。が、しかしすぐ後ろで突然巻き起こった轟音と衝撃に前につんのめる。両手をつけないから、したたかに顔面を床に強打してしまう。
「いったーい! いきなり何なのよ、もうちょっと気をつけなさいよ、この馬鹿!!」
思い切りぶつけた鼻っ面を真っ赤にしながら、ついいつもの調子に戻り叫んでしまった。
しかし、すぐに後悔に顔を青ざめる。今ここにいるのは自分たちを誘拐した男たちか、化け物だ。どちらも自分に勝ち目はない相手、そんな相手を怒らせてしまったら……
「ん…、ごめんなさい」
けれども、アリサの罵声に答えたのはそんな素直な謝罪だった。
最悪を想定していただけにポカンとしてしまったアリサの前に、濛々と立ち込める埃を掻き分けつつその声の主が姿を現す。
現れたのは、鋭くもどこか優しげで、素直な光を持った目の少年だった。少し大きめなニット帽を目深にかぶっていることで、その光が夜に光る星のように、殊に強調されている。
「じゅん、ご君……?」
呆気にとられていたアリサの横で、すずかが夢の中にいるかのような、おぼつかない口調で少年に話しかける。
それを聞いた少年は、気難しそうに真一文字に結んでいた口元を少しだけ嬉しそ
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