第5話 死に顔動画【ニカイア】(1)
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が分かる。どうやらどこかの倉庫の一角にいるらしい。
そして、何人いるのか分からない、男たち。
屈強な体躯、手にはナイフから拳銃、更にはマシンガンだろうか、大きな銃器を持っているというのは共通しているが、表情は違う。こちらに向けて舌なめずりをする下ひた表情、品物を見るような無感情な表情、何かに浮かれこちらにさして興味を持っていなさそうな表情。それぞれ違うが、みな一様に気味悪く感じる。
ふと、となりで女の子の声があがるのが聞こえる。
多分、アリサの声だ。それが目の前の男と言い争いをしている。
「…どうしてこんなことするの!?」「早く私たちを…帰らせてよ!!」
「…それは…お父さんが悪い…。」「君には…お父さんに休暇を取ってもら…人質…」
「…!! だったら、せめてすずかだけでも…」
アリサが必死になってこの場を切り抜けようと言い争っている。
それが分かるのに、それでも現実感は生まれない。すずかはまるでドラマの一場面のようだと感じてしまっていた。
ドラマだったら、ここで味方が助けにきてくれるのかも、と考え、クスリと小さく笑いを洩らす。現実を認識しようとしてもできない、それは性根が優しいすずかが自分の心を守るためにとった行動だった。
しかし、それも嫌にはっきり聞えた、次の男の言葉で破られることになる。
「あぁ、そりゃあ無理な相談だ。黒髪のお譲ちゃんにはさる研究所の実験材料になってもらうっていうお仕事が待ってる」
「なっ…。」一瞬で意識がその男の方へ向かい、顔を凝視してしまう。
いま、目の前の男は、何といった?
「実験材料って…、どうして、そんな酷い事言うのよ! すずかは人間よ! 変なところなんて何もないわよ!?」
隣でアリサ猛然と喰ってかかる。それに答えようとするのか、男は口の端を皮肉げにつりあげ、ゆっくりと口を開く。
「待って、やめてぇ…」小さく声が漏れる。それは今の自分にできる精一杯の抵抗。
今の男を止める術は無く、その事に絶望しながら、それでも必死に口に出した言葉。
だが、男はそれを聞いて更に愉快気に笑うだけ。
「いいやぁ、そのお譲ちゃんは人間じゃない。詳しくは知らされていねぇが、なんでも人の血を啜って生きる“化け物”の一族だそうだ。どうだい、親友が実は人間やめてましたって分かった気分は?」
それを聞いた瞬間、すずかは前にもまして呆然としてしまう。知られてしまった、自分たち月村家が一番秘密にしていたかった事を、よりにもよって親友に。
男の言葉にアリサが目を大きく見開き、こちらを見てくるのが分かる。
???やめて、そんな顔しないで、こっちを見ないで。
顔を見られない様に背中を丸めて、何もかも振り払うように激しく首を横に振る。
こんな現実はいや、自分は何
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