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生滅の一本
一話目
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後ろの侍女が話しかけてくる。だが、見ていない俺にも怯えている様子がわかった。

「いや、気にしないでくれ」

再び脚に力をいれ跳び上がる。
バケモノが嫌われるのは世の常だな。もう慣れたさ。
城の屋根に着地した俺は横になり目をつぶった。

月は平等に地上を照らしていた。

※ ※ ※

歩兵と共に川岸を歩いている。肩に担いだ槍は太陽に照らされ反射をしていた。誰も言葉を発しない。いや、発せないのか。長い行軍は強い疲労を残す。だから攻める側は守る側の三倍の兵力がいると言うのだ。

「空が綺麗だな……」

何となく空を眺めた。雲一つない晴天だった。
荒廃したあの世界では失われてしまった青を……世界を懐かしく感じる。そして、同時に人間ではないこの身に引け目を感じる。周りには必死に歩く重装歩兵達。槍一本しか持っていないといえ、疲れ一つない俺はやはり全く違う存在なのだろう。

「ままならないモノだな……いくら進んでも、いや……俺らしいといえばそうらしい道かな」

遮るもののない太陽光は兵達の体力を大量に削っているようだ。へばっている者はいないが時間の問題だろう。俺は周囲を見回すと遙か前方にアメリアがいることを見つけた。誰かを探すことが俺にとっては久しいことだった。
兵の疲労を言うべきか……いや俺は軍どころかパーティーすら率いたことがない。黙っておこう。
その後俺は景色を楽しみつつ行軍速度に合わせ歩いていった。

※ ※ ※ 

そろそろ太陽も落ち始めたころ、夜営の準備に取りかかっていた。俺も手伝えることはやりたいが最後にそれをしたのは遙か昔のことだ。さらに一人分……全く勝手が分からない。

「…………ふむ」

近くを歩いていた兵士に話しかける。まだ少年のような彼は恐らくは初仕事がこの戦争だったのだろう。金髪の髪は本人の疲れを表すかのように草臥れている。

「すまないが……何か手伝えることはないか?」

兵士は疲れたような顔をして俺をチラリと見るとそそくさと去ってしまった。どうやら余り歓迎されていないようだ。俺に手伝えることはないのだろうか?俺はどうすればいいのか判らずに少し離れた木下で槍を抱えて胡座をかいていた。

「…………何が違うのだろう」

遠くで焚き火を囲む兵士達が羨ましい。俺も人と触れ合いたいのか?いや……バケモノにそんな権利はないな。やることのない俺は周囲の警戒をしながら仮眠を取ることにした。

※ ※ ※ 

さて、その後何日かの行軍の後無事隣国の王都……アメリアにとっての城へと着いた。街並みは白塗りの煉瓦で建てられた家が連なり、中央の通りには市がひらかれている。このそして巨大な城は全体的に高めの位置に作られていた。城に向かって帰還する軍に都市の人々は歓声で迎える。

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