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生滅の一本
一話目
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独りの時に散々生物を探したからな……。

「いや、気にするな。で、結局貴公は何者だ?」

ここで聞かれるとはな。まだ、この世界のことを知らない……ここは友好的に取り入って貰わなければいけない。

「あの謁見の間の死体はなんだ?腐っていたでたないか」

あれか……拷問用に昔作ったやつだな。生物は俺しか居なかったが。

「あれは奴らが俺を奴隷にしようとしたから反撃したのだ」

「反撃……そうか。わかった」

アメリアは納得しないも頷きはした。

「では貴公は何者なんだ?と言うか何故奴隷にされそうになった」

「俺は召喚された。お前等を皆殺しにする勇者としてな」

空気が凍る。アメリアは腰の剣に手をかけ脚に力を入れている。俗に言う臨戦態勢というやつだ。
月の光が俺たちを照らす。アメリアの額には冷たい汗が浮かんでいた。

「いや、俺はそれがいやで奴らを殺したのでな。敵対の意志はないよ」

アメリアはまだ多少警戒を浮かべているが先程のようにはなっていない。だが、軍を担うものならば臆病なくらいがいいと思う。

「それに……俺は俺の意志で槍を取る」

ここは譲れない……。誰かの命令で戦うなど有り得ない。殺した命位、自分で背負わなくてどうする。
俺は勢いにより、肩の槍を足下に突き立てる。魔力で硬化しておいた槍は刃こぼれせずに奥まで突き刺さった。アメリアが一つ息を吐くと

「すまなかった。貴公は武人なのだな」

武人……か。そんな大層なものではないな。俺はバケモノだ。

「気にしてはいない。少し一人にしてくれ」

「すまない」

そう言うとアメリアは兵士達の所へ降りていった。再び静かになる俺の周り。未だ衰えぬ歓声が時折耳にとまる。
俺は光を放っている月を眺めた。

「キャァァァっ」

唐突に女の叫びが聞こえた。そちらを見てみるとこの城の侍女であったであろう少女が数名に兵士に襲われそうになっていた。

「………………下種が」

吐き気がするな……。
突き刺さっていた槍を引き抜き侍女の前まで跳ぶ。そして服をはためかせながら地上へと降り立つ。

「さて、月も綺麗なこんな夜だ……。静かに眺めてはどうだ?」

まあ、元の場所に帰れと言った。可能なら殺したくない。

「はぁっ?馬鹿じゃねーの?」

一人の男が酒臭い臭いをさせながら寄ってくる。酔っているな。
いきなり大振りに殴りかかってくる男。それをカウンター気味に殴り返す。男は吹き飛んでいった。いくら力を入れなくてもこうもなるか。

「さて……まだやるのか?」

途端に逃げ出す男達。流石に戦場にいるだけのことはある。酔っていても実力差を把握できるとは。戦場では忠誠心で生き残れない。

「……あのっ」

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