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『もしも門が1941年の大日本帝国に開いたら……』
第九話
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「起きましたか?」

「黒ぉ〜、いきなりは酷いぞ」

「栗山よりマシです」

「……納得した。で何よ?」

 伊丹は納得しつつ訪問者の黒川軍曹に訊ねた。ちなみに栗山とは第三偵察隊に所属する栗山軍曹の事でノモンハン事件の戦闘を経験している猛者でもあった。

「保護したテュカの事です」

「ん?」

「様子がおかしいんです」

「彼女の様子が?」

「はい。食事、衣類、居室は全て二人分を求めてきます。ですが食事は一人分だけ食べてもう一人分は手をつけないんです。それと衣類は男物を請求してきます」

 黒河の言葉に伊丹はお茶が入った瓶に口を付けたまま暫くは動かなかった。

「理由……聞いたみた?」

 伊丹はゆっくりと瓶を机に置いた。

「レレイちゃんやヒルダさんを通じて尋ねてみたのですが、「分からない」「食事時に」「いない」そうです。レレイちゃんもヒルダさんもまだ日本語が上手じゃないので……」

「……幽霊の彼氏を飼っているとか?」

 気分を紛らすために伊丹はそんな事を言うが黒河の表情は冴えない。

「それならばいいのですが……或いは亡くなった家族を一定期間生きているかのように扱うという葬送の週刊かもしれません」

「カトー先生には?」

「先生もよく分からないそうです。彼女はエルフという種族でも希少な部類らしく……」

「やっぱ妖精種のエルフか〜」

 黒河の言葉に伊丹はそう言った。

「それか家族が死んだ事を無意識のうちに認めてないかもな」

 そこへ樹が口を挟む。

「恐らくテュカちゃんはあのドラゴンに家族を食われたんやろ。そのせいでまだ家族は生きていると思っているんやろ」

 樹はそう言ってお茶を飲む。

「……ま、よく話し合ってみるしかないんじゃない?」

 少し重くなかった空気を変えるために伊丹はそう言った。

「はい……けどあまり打ち解けてくれなくて……」

「え? 人気者の黒河(クロ)ちゃんに?」

 黒河の言葉に伊丹は驚く。ちなみに黒河軍曹はかなりの美形であり、避難民の女性達から人気があった。

「それは困ったな。栗山(クリ)は拳で語り合う男だしな〜」

「アッハッハッハッ!!」

 伊丹の言葉に樹は思わず笑った。

「隊長、そろそろ時間です」

「え? もう?」

 その時、桑原曹長が入ってきた。

「まぁ今から偵察ついでに鱗を売りに行くし、彼女らを連れて街まで行く事だし時間があったら俺も話してみるよ」

「ありがとうございます大尉殿」

 伊丹の言葉に黒河は頭を下げた。








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