無印編
第十八話 裏 後 (アルフ、プレシア、なのは)
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なかった。フェイトも手を伸ばすが、届かない。結局、そのまま蒼い衣服は地面に落ちてしまった。昨日の雨で泥になっている地面の上に。
「あ、あ、あああああぁぁぁぁぁ」
「ど、どうしたんだい? フェ―――アリシア」
アルフから逃れるようにばたばたと体を動かし、アルフの腕から解放されたフェイトは、地面の上に落ちてしまった衣服を慌てて拾うと一生懸命、衣服についてしまった泥を落とそうとする。泥は拭っただけでは取れず、もう一度洗濯するしかないのだが、それでも執拗に拭い、落とそうとする。
アルフにはフェイトの行動が分からなかったが、似たような症状は今朝も見ていた。誤ってお皿を割ってしまったフェイトが見せた表情が今のような表情だった。絶望に彩られ、目から焦点を失ったような表情。ただただ、自分の失敗をなかったようにするフェイトの行動。今朝のときは、割れたお皿を素手で片付けようとしていた。翔太の割り込みで幸い怪我はなかったが。
そして、そのとき、決まって呟くことは一つだけだ。
―――――「ごめんなさい」
今のアリシアも屈みこみ、取れることのない泥を払いながら、ごめんなさい、ごめんなさいと念仏のように繰り返している。
こうなってしまえば、アルフにできることはなかった。アルフが声をかけても反応しないのだ。この事態を収集できるのはたった一人だけだった。アルフがその人物を呼びに行こうとしたとき、彼女が様子を見に来たのか、庭に顔を出した。
「あらあら、どうしたの?」
「か、母さん」
そう、フェイトが現状、反応するのは翔太の母親だけだった。
「ああ、洗濯物を落としちゃったのね」
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……」
状況を把握した翔太の母親と翔太の母親にひたすら謝るアリシア。その表情は、今朝と変わらず絶望に彩られていた。翔太の説明によると、彼女のこの症状には、母親―――プレシアからの虐待の記憶があるかららしい。今もフェイトを苦しめるあのクソ婆がアルフは忌々しかった。
そんなフェイトを翔太の母親は抱きこむように背中に手を回す。
「大丈夫よ。また洗濯すればいいんだから。でも、次からは気をつけてね」
その声は慈愛に満ちており、優しかった。
「私は捨てられない?」
「ええ」
翔太の母親の言葉に安心したような表情をするフェイト。せめて、せめて、とアルフは思う。彼女のような優しさがあのクソ婆にもあったら、フェイトはもっと幸せになれたのではないか、と。彼女が望んだ幸せが手に入ったのではないかと。
「それじゃ、もう少し手伝ってね」
「うんっ!!」
翔太の母親に頭を撫でられ、目を細めるフェイトの幸せそうな表情を見るとアルフはこのままでいいのでは
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