無印編
第十八話 裏 中 (アリサ、すずか、恭也)
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話が聞こえてきた。
「ショウくん、これおいしいんだよ。だから、はい」
「え? いや、はいって……それはちょっと」
非常に困惑した翔太の声。いつも、冷静なショウが困惑するのは珍しいな、と二人の方に視線を向けてみると、スペースがあるにも関わらず殆ど翔太とくっつくような距離に座ったすずかが自分のお弁当から取り出したおかずを箸に挟み、それを翔太に向けて差し出していた。それを困惑した表情で見つめる翔太。
―――え? なにこれ? どうなってるの?
これには当事者でないはずのアリサも困惑してしまった。
お弁当からおかずを取り出して食べさせるなんてすずかのキャラではない。少なくとも今まで一度もない。アリサがすずかのお弁当や翔太のお弁当からおいしそうなおかずを取ることはあっても逆はなかった。だが、目の前で繰り広げられている光景は、今まで一度もなかった光景が展開していた。
少なくとも昨日まではすずかの様子は普通だった。違うのは今日の朝から。あの二人が内緒の話をしてからだ。一体全体、本当に何を話したのだろうか。混乱と困惑と疑問でおそらく翔太と一緒に食べたのに一番口数の少ない昼食になってしまうのだった。
それからも、すずかの様子は変わらなかった。お弁当を食べた後の休み時間もやたらと翔太と一緒に話したがる。しかも、笑顔が多い。すずかが声を出して笑うことなんて珍しいのに、翔太と話している間は、その珍しいことが何度も起きていた。一回の会話で一年分ぐらい。よほど機嫌がいいのか、とアリサも会話に加わるのだが、アリサが会話に加わった途端、すずかの様子は元に戻ってしまう。翔太と二人だけで話している間だけ、すずかの様子が変わるのだ。
そのことに気づいたとき、アリサの胸の奥が少しだけチクリと痛んだ。
お昼休みが終わった後もすずかの様子が変わることはなかった。ちょっとした小休憩にもすずかは翔太の元へと駆け寄り、取り留めのない話をする。それは、今まで席が近くだったアリサとすることが多かったはずなのに。
すずかの様子が変わったことが気になったアリサは放課後、翔太がいつものようになのはという少女と一緒に探し物にいってしまい、アリサとすずかだけの通学路ですずかから何とか内緒の話を聞きだそうとしていたが、頑なにすずかは笑顔で「内緒だよ」と音符がつきそうな弾む声で話の内容をアリサに決して話すことはなかった。
帰宅してからもアリサはすずかの様子が気になって仕方なかった。内緒といわれれば気になるのが人の性だ。だが、アリサにはすずかの様子があんなにも変わってしまう理由が見出せなかった。たった一日ですずかから翔太への態度が変わる理由など見当がつかなかった。それに翔太も仕方ないという感じで受け入れていたのも気になる。つまり、すずかの
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