無印編
第十八話
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行くというのだから、彼女が悩むのも無理もない話だ。普通に考えれば、彼女たちは捕虜。何をされてもおかしくないのだから。
雨の音だけが存在する空間で再び彼女が口を開いたのは、しばらく経ってからだった。彼女の中でどんな葛藤があったのかわからないが、彼女にとっては重大な決断だったのだろう。
「……わかったよ。私はどうなってもいい。何でも答えてやるよ。だから……だから、フェイトだけは助けてくれっ!!」
フェイトというのは少女の名前だろうか。まるで懇願するように全員を見つめる女性。それに否と答えられるほど僕たちは薄情じゃないし、本気で頼んでいる人の願いを無下にできない。
「わかった。その少女の安全は保障しよう」
それで納得したのか、警戒は解かないものの、恭也さんが獣耳の女性に手を差し出す。獣耳の女性も警戒していたが、やがて諦めたような表情をして、少女を胸に抱きかかえたまま恭也さんの手を取って立ち上がった。
こうして僕たちはまた風を切るような速度で一路、蔵元家を目指すのだった。
◇ ◇ ◇
僕の家のリビングは重々しい雰囲気に包まれていた。この場にいるのは、僕、なのはちゃん、ユーノくん、恭也さん、忍さん、そして、獣耳の女性だ。親父はまだ帰宅していないし、母さんとノエルさんにはフェイトと呼ばれた少女の世話をしてもらっている。着替えや布団に寝せたり、あとはあまりいい気がしないが、怪我の治療もだ。
帰宅後、この人数には驚いたものの母さんは、すばやく行動してくれた。女性陣―――なのはちゃん、忍さん、ノエルさん、獣耳の女性―――は、お風呂に入れて、その間に洋服はすべて乾燥機にかけ、男性陣―――僕と恭也さん―――は暖房の前で、タオルで水気を取り着替えた。僕の着替えは自分の家なのであるのだが、恭也さんには当然ない。親父のを、と思っていたのだが、サイズが違いすぎた。親父は細身の身体であり、恭也さんは鍛えぬいたがっちりした体格である。サイズが合うはずもない。仕方なく、下着だけは最初に乾燥機にかけ、上着等はジャージを羽織るだけで我慢してもらった。
女性陣の服が乾き、お風呂から出てきた頃には、夕方だった時間帯はすっかり山の向こうに日が落ちた時間帯になっていた。
「さて、それじゃ、まずはあの子と自己紹介からしてもらえるかしら?」
この重い空気を払うように忍さんができるだけ明るい声で、会談の口火を切った。こういった会議は、口火さえ切ってしまえば、後は流動的に何とかなるものだ。
もっとも、会議の司会役は忍さんで、話していたのは殆ど獣耳の女性―――アルフさんだったが。
さて、アルフさんの話を簡単にまとめると以下のようになる。
魔導師―――フェイトちゃんが、使い魔のアルフさん
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