無印編
第十八話
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を勧める。そして、母さんのことは信用できるのだろう。フェイトちゃんは笑顔でそれに応えて、布団をかぶるようにして再び横になる。それを見届けて、僕はアルフさんとノエルさんと一緒に部屋を出た。
◇ ◇ ◇
状況を説明したリビングはまたしても暗い雰囲気を醸し出していた。今度は、ノエルさんも加えた形だが。
聞いただけでは確かに状況は分からないかもしれないが、実際に見た僕からしてみれば、確かに異様だった。
フェイトという名前は確かに彼女のものなのだろう。ならば、アリシアという名前は何所から来た? アルフさんに聞いても分からないという。ならば、彼女と彼女の母親にあった何かなはずだ。あと、ゴミという言葉。これは侮蔑の言葉なのだから、虐待のときに浴びせられた言葉なのだろう。
先ほどの表情を見るに彼女は完全にフェイトという人格を捨てていた。最初は本気でフェイトという名前に聴き覚えがなかったようだから。さて、そう考えると、ちょっと危険かもしれない。アルフさんの話によると彼女は虐待を受けていたという話だから、もしかしたら、彼女は二人目の人格を作ろうとしているのかもしれない。
二重人格。言葉だけなら聞いたことがあると思う。これが起きる原因については、よく分かっていない。しかし、通説の中には、幼い頃、虐待や酷いことを受けていると、その現実から逃避するためにもう一人の自分を作るというのがあった。つまり、虐待を受けているのは自分ではなく、そのもう一人なのだと、だから痛くない、と思い込むことでもう一人の人格ができるというものだ。
この場合は、本人がすべての痛みを背負って、アリシアという新しい人格が、新しい自分になろうとしているようだが。しかも、僕の母さんを母さんと勘違いして。しかし、これが正しいのか分からない。似たような症例で上げただけだから。まだ、フェイトちゃんの記憶とリンクしているところもあるところを見ると、一歩手前の酷い現実逃避という感じにも見える。
やはり付け焼刃の知識ではこんなものか。近いうちに専門家に見せる必要があるだろう。
結局、この場では何も決まらず、とりあえず、我が家にフェイトちゃん―――アリシアちゃんを置くことを決定した。なぜなら、母さんがアリシアちゃんの母さんとみなしているからだ。ここで離れ離れにして暴れられても困るという理由で。
母さんも親父もとりあえず了承した。母さんも女の子に甘えられて悪い気はしないらしい。しかも、養育費のようなものは、月村家が出してくれるというのだから了承しない理由はなかった。警察などの対応もやってくれるというのだからいたせりつくせりだ。これがもしもプレシアさんによって考えられた罠だとしたら、アリシアちゃんを本当に傷つけているのだから苦肉の策もいいと
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