暁 〜小説投稿サイト〜
リリカルってなんですか?
無印編
第十七話 裏 (すずか、なのは、忍)
[9/11]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
くじくと溢れてくる口惜しさに耐えることだけだった。



  ◇  ◇  ◇



 月村忍は、終わったぁ、という安堵感と共にどさっ、とソファーに座り込んだ。

「ふぅ、終わったわ」

「そうね」

 翔太の会談は、比較的上手くいったというべきだろう。情報は取れたし、こちら側の事情を言いふらすつもりも、脅すつもりもなさそうだ。上手く行き過ぎて怖いような気がするが、今は喜ぶべきだと思った。
 だが、それにも関わらず叔母―――というには若すぎるが―――のさくらは浮かない顔をしていた。

「どうしたの? 浮かない顔して」

「いえ……あの子、最初から私たちのこと知ってたんじゃないかと思ってね」

 突然のさくらの言い方にしばし言葉を忘れてしまう忍。それもそうだろう。事情は先ほど説明したばかり。彼がこちら側というよりも秘密にすべき世界に無意識のうちに飛び込んでしまったのは、つい一ヶ月程度前。それまでの彼の経歴は調べたように真っ白だ。しかも、飛び込んだ後の一ヶ月はほとんどが海鳴の街の捜索に使われている。一体、どうやって彼が夜の一族のことを知ったというのだろう。

 だから、忍はさくらの言葉を笑い飛ばした。

「そんなわけないじゃない」

「だったら、彼の態度になにも感じなかった? 血を吸われて、半ば強引に連れてこられて、脅すように言質をとった。それでも彼はこちらに対して友好的な態度を崩さなかった。なぜ? 私が脅すように睨んだときも、怖がっていたけど、その後から恐怖の色を見せることはなかったわ。むしろ、納得しているみたいだった。仕方ないか、と」

 確かにいわれてみると疑念が沸いてくる。半ば脅すような会談になってしまったのは、公的機関のように夜の一族が舐められるわけにはいかないからだが、そのことに関してもまるで心得ているように動揺を見せなかった。いくら翔太が大人びた小学生だからといってもありえないような気がする。二年間、妹の友人として付き合ってきたから当然のように思っていたが、やはり翔太の態度は異常なのだ。

「彼にはまだ裏があるような気がするわ。だから、忍。彼を警戒しておいてね」

「え? まさか、そのために?」

「保険よ。あそこまでして友好的な態度を崩さなかった以上、こちらに他意はないんでしょうけどね」

「それじゃ、ジュエルシードを渡さなかったのは?」

 実は、忍たちは翔太にジュエルシードを渡していなかった。魔力を持っていない月村家が持っていても無用の長物だ。いや、町一つが崩壊しかねないほどの力を持っているものなど、災厄の種にしかならないよう気がするのだが、さくらは渡さなかった。翔太もこればかりは少し渋ったが、最終的に渡すことを約束に今回は引き下がった形だ。

「それは、時空管理
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ