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リリカルってなんですか?
無印編
第十七話 裏 (すずか、なのは、忍)
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が送れるかと思うと嬉しい気持ちがこみ上げてくる。
 ここで初めてすずかは自分が泣いていることに気づいた。もう泣く必要はないのに。嬉しいときでも涙が流れてくるものだと小説の中でしか知らなかったことを体感していた。

 それがおかしかった。泣く必要なんてどこにもないのに。明日からも今日と同じ日々が送れるのだから。朝はアリサと一緒に登校しよう。教室で翔太と合流して、まずは今日のことを謝ろう。お昼のお弁当を一緒にしよう。放課後は塾へと向かおう。休日は時々お茶会をやってもいい。そういえば、今まで一回もないが、一緒に図書館に行くのもいい。

 明日からも同じ日々が続くという安心感が生まれると次々と湧き出してくるやりたいこと。だが、そこでふと気づいた。

 ―――今までと一緒? 本当に?

 違う。違う。少なくとも今までと一緒ではないだろう。翔太は、自分の秘密を知った。それでも、受け入れてくれた。ならば、ならば―――

 ―――もっと、仲良しになってもいいのでは?

 今までは、心のどこかでブレーキがかかっていた。それはもしも、万が一にでもすずかの正体がばれてしまったときに別れが辛くなるから。だから、できるだけ仲良くならないように、深入りしないようにすずかは努めてきた。だが、翔太に対してはもうそのブレーキを踏まなくてもいいのではないだろうか。彼は自分の正体を受け入れてくれたのだから。

 本当は、友達と一緒にやりたいことが一杯あった。だが、それは危険性を考慮して見送ってきた。でも、明日からは、翔太と一緒にそれができるのではないだろうか。もっと、仲良くすることができるのではないだろうか。アリサが呼ぶように親友になれるのではないだろうか。

 すずかの中でたくさんの期待が膨れ上がる。あんなに酷いことをしたのに。受け入れてくれた翔太ならそれが可能なような気がして。だから、すずかは泣きつかれて、まどろむ意識の中で思った。

 ―――もっと、ショウくんと仲良くなりたいなぁ。

 そんなことを思いながら眠りにつくすずかを窓の向こう側から満月に近い月だけが見守っていた。
 彼女にいと高き月の恩寵のあらんことを。




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