無印編
第十六話
[2/11]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
服を褒めるとなのはちゃんも対抗するように洋服を買いに来るのだろう、と疑問を持つほど鈍感ではない。理解はできるが、その言葉を口に出すのは恥ずかしいものだ。もっとも、なのはちゃん自身はその感情に気づいていないだろうし、そもそも、それをきちんとした言葉で定義できるかどうかも疑問である。
なのはちゃんたちのような小学生、つまるところ思春期前の僕たちが明確に『恋』を自覚できるか、というと甚だ難しい。なぜなら、『恋』の根源にあるものは、恋は下心、愛は真心というように異性に対する感情だからだ。僕たちの年齢は、男女の境はできるはじめるものの、明確に意識するのは難しい。意識したとしても自分の中で完結してしまうものである。なぜなら、思春期のような二次性徴前の僕たちには、異性に触れたい、というような感情が薄いからである。だから、特別な関係―――つまり、恋人関係になろうとしない。よって、自分の中で完結してしまうのだ。
きっと、なのはちゃんはこのことには気づくことはなく、感情は薄れていくだろう。人の心は移ろい行くものだから。将来、大人になったときに『私の初恋はショウくんだったんだよ』と酒の肴にでもなれば上等だろう。
僕がこの事態について考え、ある程度結論をだしたところで、洋服売り場からなのはちゃんが、まだ試着段階のシャツとスカートを持ってきて、嬉しそうに笑いながら自分の身体に合わせて僕に見せてくる。
「ショウくん、ショウくん。似合うかな?」
「うん、可愛いと思うよ」
「えへへ」
なのはちゃんに対して何もすることはないと判断した僕にできることは、桃子さんに選んでもらったのであろう可愛らしい洋服を持ってきたなのはちゃんに褒めの言葉を送ることぐらいだった。
◇ ◇ ◇
連休から数日後。僕たちは海鳴の街の中心に位置するビル郡を走り回っていた。太陽はとっくに水平線の向こう側に消えている。いつもなら、日が暮れれば帰宅する僕たちだが、今日はそういうわけにはいかなかった。久しぶりにユーノくんがジュエルシードの反応を見つけたからだ。
さすがにジュエルシードの反応を見つけておきながら、また明日、とはいかない。ジュエルシードはいつ、誰の手に渡るか分からないのだ。しかも、万が一、他人に渡ってしまうと甚大な被害が出る可能性が高い。ユーノくん曰く、生物の中でも人というのはジュエルシードに触れたときの発動効果が高いらしい。だから、放置するわけにはいかず、なのはちゃんの家と僕の家に連絡して、今日は日が暮れておきながらも探索を続けているのだ。
だが、闇雲に探しても仕方ないので、ある程度目星はつけている。もしも、目立った場所に落ちているなら、誰かが拾っているだろう。なにせ、外見上は蒼い宝石なのだ。興味をそそられず誰も
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ