無印編
第十五話 裏 後 (アリサ、恭也、すずか、忍)
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を瞑って見ないようにした。
ゴールデンウィークになれば、高町なのはに付き合うこともないだろうし、彼ならきっと二つ返事で頷いてくれるはずである。
―――来て、くれるわよね。
いつもなら、そんなことは微塵も考えないのに、今回ばかりは少しだけ弱気だった。
―――大丈夫。どうせ、一ヶ月だけなんだから。
アリサが弱気になるのは、現状において翔太が何をおいても高町なのはを優先しているからだ。もしかしたら、ゴールデンウィークのときも高町なのはを優先するのかもしれないという一抹の不安がアリサの中にはあった。
だから、先週の小さなお茶会での翔太との約束を呪文のように唱えるのだ。
―――どうせ、一ヶ月だけなのだから、と。
要するにアリサは不安なのだ。彼女が、親友を持つことも初めてであれば、その親友が一時的とはいえ、離れてしまうことが。確かに翔太とは四六時中一緒にいるわけではない。他の男子の友人たちとの約束を優先させたこともあるが、こんなにたった一人をずっと優先したことはない。だからこそ、アリサは不安だった。
もう一度、自分の元へと戻ってきてくれるのか、と。
だが、アリサは、その不安に向き合うことはなかった。いや、彼女の聡明な頭脳はそれに気づいてるのだが、気づかないふりをした。気づいてしまえば、それを見なければならないから。
今まで、ずっと欲しかった親友が離れていくかもしれない、そんな恐怖に耐え切れる自信がなかったから。
アリサにとって翔太とすずかは本当に稀有な親友だ。
靡く金髪、生粋の日本人とは異なる白い肌。本当の意味で、ありのままを受け入れてくれる人間は少ない。幼稚園の頃は、仲間はずれにされていることを同情する人もいて、遊ぼうか? と誘ってくれた子もいるが、違う。違うのだ。アリサが求める友人はそんな同情のような感情の上に成り立つものではない。ありのままのアリサを受け入れてくれる人間だ。
だが、そんな子は本当に稀有だ。どこかに嫉妬があり、恐怖があり、羨望があり、同情がある。
違う。違う。ただ、純粋に『友達になろう』と言って欲しかったのだ。それだけがアリサの求めたものだったのだ。
そして、ようやく見つけた友人は、今では親友となった。
だからこそ、アリサは手放したくない。孤独から救ってくれた親友を。ありのままに付き合ってくれる親友を。
そんな彼らを失う恐怖を味わいたくない。だから、アリサは自分の中に生まれている不安を直視しない。目を逸らして、呪文のように、『どうせ、一ヶ月だけだから』と繰り返す。
今も、ベットの上に寝そべりながら、アリサはゴールデンウィークに行く旅館のパンフレットを見て、きっと楽しいゴールデンウィークになる、とある種確信を抱きながら、笑
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