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リリカルってなんですか?
無印編
第十五話 裏 後 (アリサ、恭也、すずか、忍)
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ぐに提案に乗ってくるものだと思っていた。もう日が暮れそうだ。後一時間もすれば、完全に太陽は山の向こう側に姿を消してしまうだろう。

 翔太が探しているものは蒼い宝石という。探し物をする上において、暗闇というのは厄介なものだ。見落とす確率が高くなるのだから。しかも、月村の邸宅は郊外にあり、ここから歩いて帰るならば、一時間は軽くかかる。ここまでどうやって来たのかアリサは知らないが、仮に歩いてきたとしてももう一度、歩いて帰るのは無理だろうし、タクシーにしても、小学生が払える額ではないことは確かだ。
 後ろに見える黒い服に包まれた背の高い男性は誰かは知らないが、仮に彼にはらってもらうにしても翔太の親族ではない以上、気が引けるはずだ。ならば、ここでのアリサの誘いは渡りに船のはずなのだが、翔太は即答しなかった。

 翔太が即答しないということは、アリサと帰る以外にも何かと天秤に掛けているということである。何と天秤にかけるかなんて考えるまでもなかった。目の前の少女と帰る以外の選択肢がありえるのだろうか。
 天秤にかけるということは、それに比べるだけの価値があるということだ。それは、一年生のときから親友であるアリサとほんの数週間前からしか付き合いがない高町なのはが天秤に計られるほど同価値を持つことを意味している。

 その意味を理解したとき、不意にアリサの胸の中に恐怖がよぎった。それは、翔太が万が一にでもなのはの方を選ぶことである。
 それは、アリサが高町なのはに負けたようで、アリサよりもなのはのほうが価値があるといわれたようで、翔太が自分の近くから離れていくようで、せっかく手に入れた親友が手から離れていくようでアリサの恐怖を誘った。

 だから、翔太がアリサの手から離れないように、なのはの方へ寄らないように声をかけようとしたのだが、アリサが口開くよりも先にその高町なのはが動いた。

「ねえ、ショウくん、一緒に帰ろう?」

 小癪にも翔太の近くにいる利点を生かして彼の腕まで引いている。高町なのはの作戦は成功したのか、翔太もやや驚いた顔をしていたが、先ほどよりも困惑したような表情を浮かべていた。その表情が意味するところは、おそらく翔太は、アリサと一緒に帰ることを半ば決めていたのだ。だが、ここにきてなのはの横槍。その横槍が翔太の困惑を強くしているのだろう。

 ―――横槍が入らなければ、あたしと一緒に帰っていたのに。

 下唇を半ば噛みながら、アリサは横槍を入れたなのはを睨みつけるのだった。



  ◇  ◇  ◇



 結局、高町なのはとその兄と一緒に帰ることになってしまった。なんでこんなヤツと、とも思ったが、一緒に帰るという提案はアリサの親友である月村すずかの姉の忍から提案されたもので、簡単に蔑ろにするわけにはいかな
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