無印編
第十五話
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最初に来たときの僕を思い出すようで苦笑してしまう。
「珍しい?」
「え、う、うん、大きいなって思うよ」
確かに大きい。しかし、大きさだけで驚いていたなら中をじっくり見たらもっと驚くだろう。僕だって、曲がった階段やシャンデリアなんて海の向こう側の家にしかないものだと思っていたぐらいなのだから。
やがて、左右両開きの扉の前までファリンさんに案内される。すると、ファリンさんが扉に手をかける前に自然と扉が開いた。
「えっと、いらっしゃい、ショウくん」
扉を開けた向こう側から少し恥ずかしそうに出てきたのはすずかちゃんだった。
だが、僕はいつもなら「こんにちは」と返すはずの返事を忘れてしまった。理由は、すずかちゃんが着ている洋服だ。僕のイメージでは、彼女が着ている服は白が殆どだ。少し色がついていたとしてもクリーム色だとか、比較的明るめの色が多かったように思える。だが、ここに来ていきなりそのイメージとは真逆の真っ黒でところどころ白いフリルがついた可愛らしいワンピースで現れたのだから、言葉を忘れても仕方ないと思う。
本当に女の子は、服装一つ、髪型一つでイメージががらっ、と変わってしまうものである。いつもの洋服なら清楚な感じのイメージが強かったすずかちゃんだったが、黒い洋服はすずかちゃんの夜を流し込んだような黒髪と相まって小悪魔のようなイメージを髣髴させる。
どちらにしてもすずかちゃんによく似合っていることには変わりない。だから、僕はそれを素直に口に出す。こういうときは、褒めるものだと相場が決まっているのだから。
「初めて見る洋服だけど、よく似合ってるね。うん、可愛いと思うよ」
「あ、ありがとう」
恥ずかしそうに頬を染めるすずかちゃん。初々しいな、と思う一方で、すずかちゃんのことばかりに構っていられないのも事実だった。
「それで、話は聞いてるかな?」
「うん。聞いてるよ。ユーノくんが逃げちゃったんでしょ?」
どうやら、ファリンさんから話は上手いこといっているようだ。
「うん、だから、庭を探させてもらいたいんだけど」
「ごめんなさい。今、森には入れないの」
すずかちゃんの答えに思わず驚いてしまった。すずかちゃんは理由もなく断わるような女の子じゃない。てっきり快諾してくれるものだと思っていたからだ。
「なんで?」
「えっと―――」
「あら、ショウくんじゃない」
すずかちゃんが理由に言いよどんでいるときに助け舟のように現れたのは、庭の森のほうから現れた忍さんだった。彼女はいつものようにラフな格好で、シャツにジーパンだった。しかし、すずかちゃんが、森に入れないといった理由は忍さんが森にいたからだろうか。
「忍」
「恭也も?
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