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故郷は青き星
第四話
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 そんな娯楽の乏しいフルント星において、娯楽の王様といえばスポーツであり、特にバスケットボール・サッカー・ラグビーに似た、集団でボールを追いかけるような種目は実際にやるのも試合を観るのも大人気──犬だけに──で、エルシャン的には何故それほど皆が興奮するのか分からなかった。
 また、料理してくれる母には悪いと思っているが『飯が不味い!』と言うのがエルシャン最大の不満事で、どうしてこんなに料理が下手なのかと思ったら、それは母に限ったことではなく、自分が生れ落ちたのが飯マズの星だったと知った時は、あまりの逃げ場の無さに絶望して「前世の記憶が無ければこんなに苦しむことは無いのに」と毎晩枕を濡らしたほどだった。
 そんな5年間を過ごしてきたエルシャンにとって、これから始まる事は遊びではないと分かっていても心が沸き立つのを止める事が出来なかった。

「エルシャン準備は良いかい?」
「はい!」
 父からの通信にエルシャンは待ってましたといわんばかりの元気な返事をする。
「やる気一杯だね」
「はい!」
 いつにない息子のハイテンションぶりに訝しむ気持ちが無いわけではなかったが、ここでポアーチは息子の様子を都合良く解釈することにした。
 普段冷静な我が子もやはりトリマ家の男子。戦いの空気に心が湧き立っているのだろうと。
 こんな父の楽天的な正確に自分の家族生活が救われている事にエルシャンはまだ気付くことは無かった。前世の分を含めれば年齢的に同世代とはいえ、精神は環境に大きく影響を受ける。何度も生まれ変わり子供時代を繰り返し百年分の時を生きたとしても大人には成れない。エルシャンとして31歳の誕生日を迎えなければ、例え田沢真治としての30年の人生があったとしても彼の心が31歳になるわけではない。それどころか子供としての環境に強く影響を受けている彼の精神は若返るというより幼くなっていた。
「よし。それでは訓練モード開始!」
 ポアーチの言葉にエルシャンは元気良く「はい!」と応えた。
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