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故郷は青き星
第四話
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「適正ってどうするの?」
 いたって普通の口調で返事をしながら、エルシャンの耳はピンと立っていた。
 彼の前世である田沢真治は1993年生まれ。その頃の世の中はスーパーファミコン全盛時代。完全なゲーム世代でありその潮流に乗って育った。
 しかも何を間違ったか、よりによって時代遅れのSTGにハマッてしまい、弾幕ゲームに幼少期を捧げてしまった男であり、長じて3Dシミュレータータイプのフライトシューティングゲームにハマり、青春時代も捧げてしまった漢であった。
 地球製のゲームなんて比較にならない、もの凄いシミュレーターを想像して興奮が抑え切れずに尻尾が振れる。
「興味あるの?」
「あります。興味あります!」
 予想外にテンションの高い息子の食いつきぶりに内心たじろぎつつも、理想的とも言える展開にポアーチはほくそ笑む。
 どこか醒めたところのある息子に『興味ありません』と一刀両断にされる恐れもあり、それを避けるために、わざわざ宇宙まで足を運びシルバ6の雄姿を実際に見せてまで興味を惹こうとしたのであった。
「じゃあ、やってみる?」
 息子の気が変わらない内にと畳み掛けるポアーチ。
「うん」
「よしそうか、じゃあさっそくやってみるか!」
 思っていた以上のスムーズな展開に漏れ零れそうな笑みを堪えると、エルシャンの手を取って展望室から最寄の擬体同調室に向かう。
 擬体同調室とは、文字通りパイロットが擬体と同調するための施設だが、専属のパイロットなどいない補給基地でもトイレと変わらないくらいの数が設置されている。それは緊急の際には事務官や技官であろうとも軍属はすべてパイロットとしての任務に召集される為、基地内にいるなら即座に任務に就けるように数多く設置する決まりになっていた。


 扉を抜けて部屋に入ると、すぐ2m先に壁があり、横幅も扉を中心に左右3mほどしかない狭い部屋で、正面の壁にはちょうど人が一人が入る大きさのカプセルが5列並んでいるだけだった。
「エルシャン。背中からそのカプセルの中に入るんだ。入ったらカプセルは閉じるけど、何の心配も無いから安心していいよ」
「わかったよ。お父さん」
『はい、お父さんが出ました!』ポアーチは息子が自然体でこの状況を受け入れていることに安心する。
 後はエルシャンが人並み程度のパイロット適正を示してくれれば何も問題は無いと思う。一流のパイロットとして尊敬は受けられなくても、侮られない程度であれば良い。何れトリマ家の嫡子として艦隊司令の地位を継ぐのだから、パイロットとしての任務よりも艦隊司令としての任務──主に書類仕事。基幹艦隊の司令が戦闘時に直接指示を出す場面などはほとんど無い──に精勤することになる。幸いそちらの方は賢い息子なら何の心配も要らないと確信していた。
「じゃあ、先に入って見
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