第四話
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と浮かぶ呆れたような表情にポアーチはたじろぐ。本人的には事実を出来るだけオブラートで包み込み子供受けするように説明したつもりだったが、失敗の2文字が彼の頭の中を過ぎる。
シルバ6は直径500kmを超える巨体だが、大きさに関してはこのクラスの大型機動要塞としては標準サイズであり、一番多く建造された標準艦といえる。
航宙母艦──全長約2,000mの船体に800機を越す戦闘機を搭載する。ただし実際の戦闘時に航宙母艦に所属するパイロット数は300人程度で、戦闘時に機体が撃破されてもパイロットは即座に新たな擬体に同調し再出撃が可能なので、残りの機体は全て予備機となっている。という建前だが、パイロット不足が大きな要因だった──が4隻を基本とする機動艦隊640個。2560隻と予備艦の280隻を格納し整備可能なドックを有するのみならず、ほぼ同等の艦隊を無補給で再建しうる生産能力とその為の資源を搭載する。要塞にして工場。そして資源基地の能力を兼ね備え、半径100光年の宙域を無補給で長期に渡り【敵性体】の侵攻から守り続ける能力を持つ。そんな同クラスの機動要塞の中でも、ポアーチが第二渦状枝腕(サジタリウス腕)防衛戦線最高とシルバ6を呼称する最大の理由は、搭載されたマザーブレインと超光速通信関連施設の性能だった。特に今回の補給で関連施設は全て最新の物に換装されることになっていた。
この両者の機能により、パイロットと擬体のラグタイムは現在の4/1000秒──擬体からの情報伝達と、それを受け取ってからパイロットから擬体への情報伝達があるので、実際はその倍のタイムラグが発生する──から5-10%程度の向上が見込まれる。
ラグタイムの減少は、他の連盟軍ではメリットとしては小さく、専ら戦力の強化は防御力の強化や、打撃力の強化に直結する搭載戦闘機の更新にリソースを注ぐのが一般的であったが、フルント星部隊には、その僅かに短縮された時間を使いこなせる優れたパイロットを大量に擁しているために、比較的少ない投資──絶対的には決して少なくない──が戦力強化に繋がる。その事を真っ先に気付き、そしてその方針を貫いているのがトリマ家のシルバ6である。
そんな彼の熱の入った説明に、次第に冷え込んでいく息子の視線。
今回の施設更新に幾ら掛かったかを説明するのは止めておこうと判断したポアーチは空気の読める男だった。
「ところでエルシャンもそろそろパイロットとしての適正くらい確かめてみてもいいんじゃないかな?」
強引に話を逸らしたが、その逸らした先は本来の目的でもあった。
シルバ族の10大氏族に数えられる誇り高きトリマ家の嫡男としては、まず戦士であることが代々求められてきた。
そして現在においては優れたパイロットであることが戦士の証であり、当然エルシャンにもそれが求められる。
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