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故郷は青き星
第四話
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。エルシャン本人は、その事に気付いていないようだが、極々自然に私のことをお父さんと呼び、話し方やその内容も子供とは思えない。最初は家族の中で私だけエルシャンに疎外されているのかとも思ったが、そうでもないようで、むしろお父さんと呼ぶ時の方が自然で寛いでいるようにも見え、逆に家族の中で私以外には自分が年相応に見えるように振舞っている様に思えた。特にエルシャンを溺愛する妻の前では、その想いに応えよう可愛い子供でいようと、出来るだけ子供っぽく振る舞っているように見える。つまり自分が普通の子供と違うことはエルシャン自身が一番よく知っている──そう考え至った時以来、ポアーチの胸にはそれまで以上の息子への愛おしさが芽生える。
 賢いゆえに自分を偽る。愛に包まれていながら孤独な我が息子が、ありのままでいられる家庭を作りたいと思うと同時に、演技でもなんでもなく普通の子供としての息子を見たいと思っていた。その思いが今日一歩前進したのだった。

「……な、な、何であんなのが家に?」
 ようやくエルシャンの口を突いて出た言葉は震えていた。
「200年ちょっと前に、5代前の……そうだな父さんの祖父さんの、そのまた祖父さんの父さんが手に入れたらしいけど、我が家はシルバ族の中でも名門……とても偉い一族だったらしく、かなりのお金持ちだったんだよ。今は面影もないけどね」
 アハハと笑った後、そんな必要もないかと思いつつもポアーチはエルシャンにかみ砕いた説明をする。もし自分が大人に説明するように普通に話して会話が成立した場合。そのことにエルシャンが気付いたら、今の親子関係のバランスが崩れると恐れたからだった。何時の日にか全て打ち解けて話し合えるようになりたいと思いつつも、今はまだ早いとポアーチは考えていた。

 300年前。連盟に加盟したばかりのフルント星社会は、六大民族──アルキタ族。カルイ族。シルバ族。キルシュウ族。シコルク族。エルゾ族を中心とした各民族による国家。 その代表者である族長達の首長会議による緩やかな国家連合に過ぎなかった。
 そして各国々の政治体制も、族長を中心とした少数の各有力氏族一門によって支配される旧態依然な封建的な社会であった。
 しかしフルント人のその高いパイロット適正により、多くのフルント人が傭兵パイロットとして連盟軍に所属し報酬を得て貨を得るようになると、大量の連盟通貨がフルント星内の市場に流入するようになる。しかも各国の統一通貨が存在しないフルント星において、連盟通貨が公式レート以上の価値を持って半ば統一通貨として扱われ始めると、経済は活性化する一方で経済統制が効かなくなり、資産を持った下級氏族達が数多く台頭する中で、領主達の経済力と影響力は低下の一途をたどった。
 封建領主階級を成す上級氏族と平民階級にあたる下級氏族の格差は縮小すると、
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