無印編
第十三話 裏 (士郎、なのは、すずか)
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高町士郎にとって蔵元翔太とは、大人びた小学生という認識であった。
高町家を悩ませたなのはの不登校事件の際に解決のための重要な情報を持ってきてくれたのが彼だ。そのときの印象は、ずいぶんと大人びた小学生だな、というもので、一年ぶりに会った彼の印象も変わることはなかった。
もっとも、二度目の出会いは、一度目の出会いなど比較にならないほどの衝撃的な内容だったが。まさか、御伽噺の中にしか存在しない魔法の存在を語られるとは思わなかった。日の光が当たらない裏の世界のことも知っているつもりだったが、その士郎をして初めて知る事実だ。
今は、なのはに恭也や美由希という護衛もつけ、魔法の中でも怪我をしないようにしていることで納得している。
魔法というものを認識して、なのはに特に怪我もなく日々を過ごしている最中、突然の知らせが舞い込んできた。
なのはが倒れたと聞いたときは、店の中だったにも関わらず、取り乱してしまった。慌てて翔太に電話して逆になだめられたぐらいだ。しっかり者だとその時、認識を新たにした。
さて、そんな彼だが、なのはが倒れ、病院から帰ってくる途中で恭也が聞いたところによると、どうやら蔵元翔太は、なのはの友達だとはっきり告げたようだ。
魔法騒動の所為で久しく開かれていなかった家族会議、その中で恭也が確かに発言した。驚きのあまり、「本当か?」と聞いてしまったが、恭也は目を逸らすことなくコクリと頷いた。
心底、よかったと思った。同時に一年前といい、今回といい、あの子には頼りっぱなしだな、と思ってしまった。だが、それでもなのはに友達ができたことは嬉しかった。
たった一人かもしれない。だが、そのたった一人を作ることに高町家は一年間、全力で取り組んできたのだ。結局、彼らが授けた機会で友達ができたわけではないが、それでも、友達ができたのだから御の字である。
さて、これらは人数を増やしていくという工程があるわけだが、一人友人ができれば、そこから輪が広がっていくことを期待した。特に翔太の名前は、学校関係者からは、みんなのまとめ役としてよく聞く名前なのだから。
下心ありでいえば、彼と友達になれたことは僥倖だった。彼と友人であれば、他の友達とも触れ合う回数が増えるだろうから。そこから、また友人が増えていくことを期待できるかもしれない。
だからだろう、なのはが倒れた次の日の練習試合のときに翔太が、女の子二人を連れて試合の応援に来たときに思わず翠屋に誘ってしまったのは、そして、翠屋についた後、その旨を家でなのはの様子を見ているはずの恭也に知らせたのは。せめて、これで翔太がつれている女の子たちと仲良くなってくれれば、いや、そこまで贅沢は言わないが、知り合いとしてなのはと話してくれれば幸いだ、と士郎は思った。
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