無印編
第十三話 裏 (士郎、なのは、すずか)
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翔太がアリサの洋服を褒めたことに起因しているのだろうか。
アリサの洋服も確かに初めて見る真紅のワンピースだったが、すずかも下ろしたての洋服だったのだ。もっとも、色はいつもと同じ白いワンピースタイプだったが故に翔太は気づかなかっただろうが。
―――もしも、私がこんな洋服を着たら可愛いって言ってくれるかな?
思わずそんなことを考えてしまったことをすずかは笑った。
深入りはしないと決めているにも関わらず、翔太に褒めの言葉を貰おうと洋服を選んでいる自分が可笑しかったからだ。
しかし、すずかにはどこか淡い期待があった。
翔太ならもし、ばれても大丈夫なんじゃないか、という淡い期待だ。
彼のどこか不思議な雰囲気。そして、幽霊という超常現象を自ら口にし、アリサは震えていたのに、翔太はまったく震えもせず、それが至極当然のように受け入れていたことも鑑みるとその期待も不思議ではない。
あの森で幽霊と翔太が口にしたときは、自分のことではないのに驚いたものだ。自分も超常現象の一人なのだから。
「あら、すずか珍しいわね。それ、気に入ったの?」
「お、お姉ちゃんっ!?」
「いいじゃない。買っちゃいなさいよ。いつも白じゃ、面白みがないでしょう」
姉の面白がるような顔。もしも、これが翔太に褒められるかどうか、で目に留まったといえば、どんな顔をするだろうか。
だが、それは想像するだけにとどめた。想像だけでも非常に大変だったのだから、きっと実際に口にすればすごいことになるだろうから。
「それじゃ……うん」
そっ、とすずかは黒いワンピースを買い物籠の中に入れた。
―――これを着たら「可愛い」って言ってくるかな?
別の意味の淡い期待も込めて。
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