暁 〜小説投稿サイト〜
Fate/stay night -the last fencer-
第二部
聖杯戦争、始動
幻想天舞(2) 〜交絶する光の涯て〜
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だ続く命懸けの死戦に、自身すら切って捨てるほどの徹底した冷徹。
 オレにとって、何か大切なものを壊されようとしていることに対する憤怒の激情。

 意識は明晰。思考は怜悧。興奮と怒りに染まった頭の中は、されど凍りついたように冷静で。

 灼熱の戦意に凍餓しながらも、絶対零度に焦熱する殺意。
 黒守黎慈の裡に宿る何かが、彼女を救うためにどうすべきかを明確に教えてくれていた。



Gravity is nothing to stop my leg(ああ、重力は私を見放した)



 無意識に、無自覚に。
 自然と口から紡がれた詠唱。

 オレの知らない魔術をオレが行使する(・・・・・・・・・・・・・・・・・)
 
 大した助走も無しに、跳躍だけでフェンスを悠と飛び越える。
 そして跳躍からまるで飛翔へと移行するかのように、オレは宙へと躍り出ていた。

 そこはまさに天馬の真正面。

 フェンサーとの間に滑り込むように、オレは空中でライダーと対峙していた。

「愚かな……飛んだところで落ちるだけ、割り込んだところで蒸発するだけです」

 蛇が何かを言っている。
 何か喋っているのは見て取れるが、音は全く耳に入ってこない。

 身体の感覚が鈍い。熱に火照っていた身体は冷え切り、昂揚感ももはやゼロ。
 あれだけ激しく鼓動を打っていた心臓は、身体の中から無くなったか(・・・・・・・・・・・・)のように静かだ。

 黒守黎慈はもう死んだのか。黒守黎慈は今生まれたのか。

 この瞬間、まるでゲームのように他人の視点を通して世界を見ているようだった。

「いいでしょう。それならば貴方の大事なサーヴァントと共に、この戦争から退場させて差し上げます」

 天馬の手綱が握られる。
 気づけば既にオレは剣を構えていた。

 ……なるほど。

 これを戦闘意思とみなし、ライダーは臨戦態勢に入ったのか。





 集中する。一挙手一投足、指先の動きさえも見逃さないように極限まで集中する。

 そうして天馬の手綱が引かれるその刹那、共振させていた魔力と共に白銀の宝剣を解放した。





「静黙せよ、散切れろ下等。聖杯の贄と溶け堕ちるがいい」





 誰かが言ったその言葉は、オレが言ったその言葉は、死刑宣告であると共に勝利宣言。
 
 瀑流のように荒れ狂う魔力を飲み込んで、クラウ・ソナスが聖光と共に真名解放を伴って発動した。

聖遺物・概念顕現(ミスティック・ディヴァイナー)────誓約された不敗の剣(クラウ・ソナス)!!!!」
「ッ!? そんな馬鹿な!!?」

 フェンサーの解放に比べれば10分の1にも満たない規模。
 
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