無印編
第十一話 裏 (なのは)
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ピピピピとカーテンから差し込む朝日を浴びた携帯電話が震えながらアラームを鳴らす。
その音に反応して、携帯電話が置かれた枕元に布団の中から手が伸びてきて、ピンク色の携帯電話を掴み、布団の中へと持っていってしまった。その直後、布団がばさぁっと舞い上がる。布団の中から出てきたのは、栗色の髪を肩より少し下まで流した小学校中学年程度の女の子。この部屋の主である高町なのはだった。
彼女は、身体を起こすと急ぐようにベットから飛び降り、ばたばたと着替え始める。掛けてあった制服に袖を通し、下ろしていた髪をリボンで変則的なツインテールにする。それが終わると、顔を洗うためにパタパタパタと駆けながら、部屋のドアを開け、階段をタンタンタンと下りていく。階段を降りきり、リビングに顔を出すとなのはの母親である桃子が朝食を作っており、なのはの鼻をくすぐった。
「あら、なのは、今日は早いわね」
「うん」
桃子の少し驚いたような声を軽く受け流し、なのはは洗面所へと駆け込んだ。
桃子が驚くのも無理はない。なのはが起きるのはいつも学校に間に合うぎりぎりの時間。むしろ、自発的に起きてきたことが珍しい。いつもは、美由希か恭也が起こすまで起きないのだから。
顔を洗ったなのはが洗面所から出てきて、リビングにあるテーブルに座る。彼女が一人で座るのはいつものことだが、目の前に熱々のソーセージと目玉焼きが並ぶのは初めてだ。
「どうしたの? 今日は何かあるの?」
「ちょっと」
桃子が何かを探るように声を掛けるが空振り。そんなことは知ったことか、といわんばかりになのはは、お皿に盛り付けられた目玉焼きやソーセージをいただきますと手を合わせた後にいつもより明らかにハイペースで口の中に詰め込む。
はぐはぐはぐという擬音をつけたほうがいいのだろうか。いつものなのははこんなに能動的ではない。のろのろと口に運び、時間ギリギリになって手を合わせるのだが、今日は、一秒も無駄にはできないと言わんばかりに急いでいる。
桃子が呆然としている間にあっという間になのはの朝食が盛られた皿は空っぽになってしまった。
「ごちそうさま」
丁寧に手を合わせてお辞儀をしてなのはは、席を離れてパタパタパタと二階に駆け上がると、すぐさま降りてきて玄関に走り、用意していたお弁当を鞄に入れると、いってきます、という言葉と共に外に飛び出した。
「……いったい何があったのかしら?」
昨日とは違いすぎるなのはに呆然と疑問の声を漏らすしかない桃子だった。
◇ ◇ ◇
朝食を急いで食べたなのはは近くの停留所で聖祥大学付属小学校が動かしているバスに乗り込むと友達と仲良く話している聖祥大付属小の生徒を無視して
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