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リリカルってなんですか?
無印編
第十一話 裏 (なのは)
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一人座席に座る。いつもなら、周りの生徒を目に入れたくなくて俯いて、半分夢の中に逃げ込んでいたなのはだったが、今日は、まっすぐ前を見ていた。なぜなら、今日のなのはには希望があるからだ。

 ―――また明日。

 昨夜の去り際の蔵元翔太との単なる口約束。だが、それでも、蔵元翔太が口約束とはいえ、約束を違えるとは到底なのはは思えなかった。だからこその希望。

 ただ、翔太は、時間の指定をしていなかった。朝か、昼か、夕方か。それはなのはには分からない。だが、もしも万が一、翔太が朝のつもりだったら、なのははいつもなら遅刻ギリギリにいくものだから、翔太に会えないかもしれない。

 いや、会えないだけならまだしも、なのはが一番恐れることは、翔太にそれで呆れられることだ。約束も守れない高町なのはだと翔太に認識されることだ。

 だから、今日は今まで一度も使っていなかった携帯電話のアラームも使って起きた。本当なら朝は苦手なのに頑張って起きたのだ。

 やがて、バスはなのはを聖祥大付属小学校へと運ぶ。

 バスから降りたなのはは教室へと一人向かう。まだ、比較的朝が早いためか周りにクラスメイトの姿は見えなかった。それは、なのはがいる教室も同じで、なのはが来るいつも時間なら殆どの人間が来ているはずだが、今日は数人しか来ていなかった。しかも、彼らはよっぽど真面目なのだろう。机の上に教科書とノートを広げてカリカリカリと今日の予習をしていた。もしかしたら、宿題かもしれないが、それはなのはの知る由でもない。

 いつもより、一時間ほど早く教室にたどり着いたなのはは、とりあえず、教室の中に翔太の姿が見えなくてほっとした。どうやら、まだ来ていないようだった。もっとも、なのはよりも早く来た可能性もあるのだが、一生懸命思い出した一年生の頃の記憶を掘り出してみれば、翔太がくる時間帯は、だいたい始まる三十分ぐらい前だったはずだから、可能性は低いだろうと、なのはは考えていた。

 さて、後は翔太が来るまで何をするか、だが、幸いにして自分ひとりだけで時間を潰す方法に関していえば、よく知っていると自負している。鞄からつい最近まで読みかけだった文庫本を取り出して、挟んでいた栞が示すページから読み始める。だが、内容はさほど頭に入ってこない。読んでいたとしても気づけば、一行飛ばして読んでいたりして、いつもよりも明らかにペースが遅くなっていた。

 いや、原因は分かっている。要するになのはは気になって仕方ないのだ。いつ、翔太が来るのか。今までなのはがこのように誰かを待つというのは初体験だ。また、明日といわれて待つ時間。それはまるで友達のようで、なのはにとってはその待つ時間も楽しいものだった。いつ、来るのだろう? と思いながらなのはは、ただ待っていた。

 しかし、なのはの
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