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故郷は青き星
第三話
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ルシャンは、これからは詳しいことは父から聞こうと心に誓った。


 再び時は流れ、エルシャンは6歳になっていた。
 誕生日にようやく制限付きながらも情報端末が与えられて、暇を見つけては情報集めに没頭するエルシャンに、両親は心配な様子では有ったが、3年前に誕生した弟。そして去年誕生した双子の妹達に手が掛かっているため、彼は比較的自由に振舞うことが許されて居ると思っていた。
「あれだけ賢い子だ。普通の子供のように振舞えとは言えないよ」
「そうね。エルシャンは特別な子よ。自分で自分の道を選んで進んで行くわ……もっとママを頼ってくれれば良いのに」
 そんな両親の思惑には気付かないままに。


「う〜ん、光の速さは約秒速30万kmで、地球7週半の30万kmに200kmとちょっと足りないってざっくり憶えてるけど、まあ桁が大きいからそんなに正確な数字じゃなくても、誤差は丸まるから……でも語呂でも覚えたはずなんだよ……30万kmから200km引くと299800だけど+αがあるから29979までは多分確定で、これから連想される語呂は、肉、肉食う……いや、憎く……憎く泣く(29979)確かこれだな……んで、何か女の情念のようなものを感じる数字だったから、女か……女子や(おなご:0758)だったけ……違うな、単に女じゃなく大奥(0009)か、ちょっと違うな、でもそんな陰湿な女の戦いみたいなイメージなんだよ……」
「にいちゃー、にいちゃー」
 この星で使われている単位をメートル法に換算するために、地球だろうがフルント星だろうが共通である光の速さを利用することを思いついたエルシャンが、必死に光速が秒速にして何mだったかを思い出そうとしていると、エルシャンが座っているカウチソファの下から助けてといわんばかりに3歳になった弟のウークが自分を呼んでいる。
「ん? どうした」
 ソファの下を覗き込むと、必死に這い上がろうともがく弟の可愛い姿があり、まるで毛玉が動いているような微笑ましさに思わず頬が緩むのを抑えられない。
 はっきり言って、エルシャンはこの可愛い生き物に夢中だった。
「うぇいきたいのちいちゃーだっこ」
 両手を自分の方に広げて差し出す姿、にいちゃーがちいちゃーに成ってしまった事さえ愛らしく感じられて仕方ない。母があれほど自分を溺愛した気持ちが今なら理解できる。もしかして自分の弟は宇宙で一番可愛いのかもしれない?と本気で思う。
 本当に彼は母親と似たもの親子であった。

 一旦ソファーを降りて、弟を抱き上げてソファに胡坐をかいて座り膝の上に弟を乗せる。
「何して遊ぶ?」
 エルシャンがそう尋ねると、弟は首をゆっくり横に振って「おねむぅ〜」と応えて、彼の膝の上で身体を丸くして横になると間もなく安心した穏やかな表情で眠りに落ちた。
「……
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